ウクライナ南部のヘルソン州をめぐりロシア国防省は11日、州都ヘルソンを含む地域から部隊の撤退を完了したと主張しました。ウクライナのゼレンスキー大統領は軍の特殊部隊がヘルソン市内に入ったと明らかにし、ウクライナ軍は州都ヘルソンの奪還に向けて勢いを増しているものとみられます。

ロシア国防省 部隊の撤退が完了したと主張

ウクライナ南部のヘルソン州をめぐり、ロシア国防省は、州都ヘルソンを含む、ドニプロ川の西岸地域で軍の部隊が孤立するおそれがあるとして、部隊の撤退を進めていました。

国防省のコナシェンコフ報道官は11日に「3万人以上の兵士と、およそ5000の兵器や軍装備の撤収を進め、すべて川の東岸に撤収した」と述べ、撤退が完了したと主張しました。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は11日のビデオ声明で「きょうは歴史的な日だ。われわれはヘルソンを取り戻しつつある。軍の部隊がヘルソンに向かっていて、特殊部隊についてはすでに市内に入っている」と述べ、軍の特殊部隊がヘルソンに入ったと明らかにしました。

また、ウクライナ国防省の情報機関、情報総局は、ヘルソン市内に残っているとされるロシア軍の兵士を念頭に、SNSにロシア語で投稿し「抵抗すれば一掃されるだけだ。死を免れる唯一のチャンスはすぐに降伏することだ」と降伏を促しました。

このようにウクライナ軍は、ロシア軍の動向を警戒しながらもロシア側が侵攻直後から支配してきた戦略的な要衝の州都ヘルソンの奪還に向けて勢いを増しているものとみられます。

ウクライナ側「州都ヘルソン ほぼウクライナ軍の支配下に」

ウクライナの首都キーウで11日開かれた記者会見で、ヘルソン州の議会の議員は「州都ヘルソンはほぼウクライナ軍の支配下にある」と明らかにしました。

一方、戦況を分析するイギリス国防省は11日、ロシア軍が先月10日以降、電力施設や水力発電のダムなどを標的に攻撃を行い、ウクライナは広範囲で被害を受け、特に首都キーウで影響が出ていると指摘しました。

そのうえで「ロシア軍は医療や暖房など重要機能に無差別に影響を与えている。軍事目標よりも重要なインフラ施設を優先して攻撃し、ウクライナ国民の士気をくじこうとする意図が強く感じられる」と分析しています。