次期日銀総裁の人事についてロイターは9日、「政府が2人の副総裁候補とともに14日に国会に提示する方向で調整している」と報道した。黒田総裁が推進してきた異次元緩和の限界が明らかになっている。次期総裁の条件は誰が考えても黒田路線の修正に適した人となる。日経新聞は先ごろ「政府は雨宮副総裁に次期総裁を打診した」と断定的に書いた。官房長官も岸田総理もこの記事に対して否定も肯定もしていない。ポイントは「肯定しない」ことではない。「否定しないこと」だ。ただ昨日の衆院予算委員会で総理は微妙な発言をした。「主要国中央銀行トップの緊密な連携や、内外の市場関係者に対する質の高い発信力と受信力が格段に重要になってきていると認識しており、こうした点に十分配慮して人選を行っていきたい」と述べた。一部メディアはこの発言を受けて「中曽前副総裁の可能性が高まった」と報じている。

総理の頭の中ではすでに結論は出ているのかもしれない。日経新聞が自信満々に打った「雨宮副総裁に打診」という記事を読んだ上で、「内外の市場関係者に対する質の高い発信力と受信力が格段に重要になってきている」と発言した。要は国際性と対話能力である。両氏ともこの面で甲乙つけ難い能力を備えている。どちらが総裁になってもさほど大きな差はない。強いてあげれば国際性という点で中曽氏にわずかながら優位性がある、というのがマスメディアの一般的な評価だろう。私のようなど素人がこの発言を読んだ時にイメージするのは中曽氏である。客観的かつ公平に評価しているわけではない。知らず知らずにメディアの影響を受けているのだ。では意中の人が雨宮氏だとすれば、総理はどのような発言をするのだろうか。予断と偏見で想像すれば「金融政策に精通している」「これまでの実績」「大胆な実行力」といったキーワードになるのではないか。

個人的には黒田総裁との距離感が大事だと思う。中曽氏も雨宮氏も副総裁として黒田総裁を支えてきた人物である。そいう点からみた距離感は両氏とも「かなり近い」のが実情だ。とはいえ、時間軸で見れば前副総裁よりも現副総裁の方が明らかに近い。金融政策の修正に踏み切るのだとすれば、雨宮氏よりも中曽氏の方が黒田氏から遠いだけ有利かもしれない。両氏以外の可能性だってないとはいえない。個人的には適任者がいれば女性総裁という選択肢もありだと思う。男性よりも女性の方が思い切った決断ができる可能性がある。いずれにしろ最終的には総理の決断で決まる。14日まで残りはあとわずか。現下の日本経済を踏まえた上で、今後の金融政策をどのような方向に持っていこうとしているのか、国際金融と日本の金融政策をどのように整合させようと考えているのか、岸田総理の資質が問われることになる。