[東京 22日 ロイター] – トヨタ自動車とホンダは22日、2023年春闘の労使協議をそれぞれ行い、両社とも組合からの賃上げや年間一時金(賞与)の要求に満額回答した。急激な物価上昇に対応し、若手など優秀な人材確保につなげる狙い。

トヨタは初回、ホンダは2回目の交渉で事実上決着した。裾野の広い自動車業界の大手2社が早々に満額回答したことで、賃上げの波が中小企業を含む業界内外へ広く波及する可能性がある。

トヨタが初回で回答水準を表明するのは2年連続、満額回答は3年連続。例年は4回目の協議(今年は3月15日を予定)で回答していた。賃上げには基本給を引き上げるベースアップ(ベア)相当分と定期昇給分を含む。トヨタの労組は具体的なベア要求額、定期昇給も含めた総額を公表していないが、1人平均賃上げ要求額は過去20年で最高レベルの水準で、賞与は6.7カ月分を求めていた。

トヨタは自社メディア「トヨタイムズ」で労使協議会の様子を紹介。豊田章男社長は姿を見せず、4月に社長となる佐藤恒治執行役員ら新体制の役員が交渉に臨み、賃金と賞与について組合要求通り回答することを伝えた。パートタイマーやシニア期間従業員の賃金も引き上げる。

佐藤次期社長は「自動車産業全体への分配を促す先頭に立ち、自分たち1人ひとりが当事者として汗をかく」などと語った。

15日に続いて2回目の交渉となったホンダは、労組が求める賃上げ5%と一時金6.4カ月分に満額で回答する方針を提示した。特に賃上げについては全従業員に一律同額ではなく、人材確保の点から若手に厚く配分する。

ホンダによると、2回目の交渉で満額回答するのは過去最速。同社労政企画部の平原克彦・労政課長は早期回答に至った背景について、初回交渉で「労使の目指す姿、それを達成するための課題認識が大枠で一致した」と述べた。

労組の要求額は、ベア相当分が1人平均月額1万2500円、率にすると3.3%で、会社側が確認できる1990年以降で最も高い水準。定期昇給・昇格分を含む総額は1万9000円、率では5%となり、労働組合の全国中央組織「連合」が求める水準と同じ。賞与の要求は、昨年の要求・実績よりも0.4カ月多いが、月数は22年度の連結営業利益に連動して最終的に確定する。

(白木真紀 編集:久保信博)