Robyn Mak

[香港 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中国の電子商取引大手、アリババ・グループ・ホールディングに期待した投資家は現実に引き戻されている。同社はコスト削減が功を奏して昨年10―12月期の利益は大きく伸びたが、張勇(ダニエル・チャン)最高経営責任者(CEO)が示した今後の見通しは、ぱっとしなかった。アリババ株はこの1カ月間で30%も下落。中国経済正常化を巡る熱狂は早くも冷めつつある。スライドショー ( 2枚の画像 )

23日に発表された10―12月決算では、同社がいかに大規模なコスト削減を進めたかが明らかになった。昨年1年間で全従業員の7.5%に当たる約2万人を削減し、製品開発費は14%、営業・マーケティング費は17%、それぞれ減少。これらが奏功して調整後利益は12%増えて約70億ドルとなった。

中国が3年におよぶ「ゼロコロナ」政策を突然終了したことで人々の生活は正常化しており、張CEOは慎重ながらも楽観的な見通しを語った。消費者が衣料品などへの支出を増やすのに伴い、企業の広告も増えると予想した。広告はアリババの売上高にとって特に重要だ。

ただ張氏は1月は「試練の時だ」とも語り、経済再開の行方を注視しているとした。バーンスタインのアナリストは、アリババの買い物プラットフォームの取引高が1―3月期に前年同期比横ばいにとどまると予想している。

これはがっかりだ。昨年11月から1月末にかけて、ニューヨークに上場するアリババ株は80%余りも急騰していた。同社株の動きは中国の個人消費への期待を反映しており、2021年に米国で見られた「リベンジ消費」の中国版が訪れるとの見方に基づいていた。

ただ、中国の家計がパンデミック中に蓄積した過剰貯蓄はUBSの推計で最大4兆6000億元(6660億ドル)に上るとは言え、中国政府はこの間、家計に大規模な給付を実施してこなかった。

米中のこの違いが今、結果として表れつつある。中国主要都市で新型コロナウイルスの感染爆発が峠を越えた今、個人消費は改善しているようだが、レストランや映画館など実店舗に流れている部分が大きい。失業率が高いのも米国の回復期と対照的で、家計債務の増加と併せて回復の足かせとなるだろう。

アリババはコロナ前のありふれた課題に立ち返らざるを得ないだろう。JDドットコム(京東商城)など古い商売敵に加え、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営するバイトダンスなど新参企業との競争激化だ。

投資家が中国株全般に興味を失いつつある兆候も見られる。ゴールドマン・サックスのデータによると、ヘッジファンドは過去数カ月間に中国株への投資を再構築したが、今ではそれを減らし始めた。アリババは、中国経済再開ブームの限界に直面している。

●背景となるニュース

*アリババが23日発表した2022年10―12月期決算は、売上高が前年同期比2%増の2480億元(359億ドル)だった。調整後利益は12%増の400億元。

*張勇(ダニエル・チャン)最高経営責任者(CEO)は投資家との電話会議で、経済は「軌道に戻り」、「消費者と企業の信頼感は高まっている」と述べた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)