• 攻勢で大きな戦果挙げられず、春の攻撃計画を縮小
  • 40万人は契約軍人で賄う、政治的に不人気な強制動員の回避目指す
昨年動員された30万人のロシア軍兵士は、ほぼ全員がいまや戦場に投入されている Source: AP Photo

ロシアは冬に開始したウクライナでの攻勢で占領地を大きく拡大することができなかったため、今春に追加攻撃をかける計画を縮小した。代わって、近く始まると予想されるウクライナ軍の反攻を防ぐことに注力する。

  非公表の情報だとして匿名を条件に語った関係者によると、ロシアは長期戦を念頭に最大40万人の契約軍人を集めることを目指している。これによりロシア軍の人員を補充したい考えだという。

  契約軍人を大幅に増やす野心的な計画が実現すれば、予備役を再び強制的に動員することは避けられるだろうと、関係者は述べた。年内にはプーチン大統領の再選を目指す選挙戦が本格化することも背景にあるという。昨年秋の動員令は国民の信頼を揺るがし、最大100万人ともいわれるロシア人の国外脱出を引き起こした。

  戦場だけでなく政治的にも困難に直面するプーチン氏だが、米国や欧州などのウクライナ支持者にロシアは粘り勝ちできるとの確信を示唆している。向こう数カ月のウクライナの反攻をロシアが止めることができれば、ウクライナ支援は弱まると踏んでいる様子だ。

  関係者によると、ロシア政府内の多くや体制内エリートはロシアの勝利に確信を持てていない。だが、強硬派の安全保障当局者は今回の戦争を国家の存亡に関わると見なして継続を決意し、プーチン氏本人を動かす影響力も持っていると関係者は語った。

  米国など西側諸国はプーチン氏を孤立させようとしているが、今月には中国の習近平国家主席の訪問を受けて公に力強い支持を得た。習氏の是認は支持を示す重要なサインだとし、ロシア大統領府当局者は習氏の訪問に内部で楽観的な見方を示している。

  ロシア軍がウクライナで苦戦する中でも、中国は殺傷力ある兵器の供給を公に約束してはいない。ウクライナや西側の当局者によると、昨年秋に動員されたロシア軍兵士30万人はこれまでにほぼ全て戦場に投入された。それでもロシアは、ここ数カ月に大きな戦果を挙げていない。

  ロシアは既に、数年間の条件で契約軍人の募集を開始している。地方当局には採用人数のノルマが課され、候補者には徴兵委員会への出頭を指示する招集令状を発行していると、事情に詳しい関係者は明らかにした。兵役経験者や農村部の住民を当局はまず狙っているという。

  だが、年内に40万人の契約軍人を集めるという目標が現実的とは思えないと、当局者の一部は語った。この人数は、昨年2月24日のウクライナ侵攻開始前にロシアが抱えていた職業軍人の総数にほぼ匹敵する。

  「現在の状況で、入隊希望者がいるとは思えない。恐らく狂信的な愛国者か経済的な理由がある人だけだろう」と米ランド研究所の上級研究員で、米国防総省の元ロシア軍専門分析員だったダラ・マシコット氏は指摘。「ロシアがウクライナにもう一度大規模な戦力を投入するのが可能だとは思われない。可能になるのは、戦時経済と戒厳令に移行する場合だけだ」と語った。

  ロシアはマシコット氏が言及した選択肢をとる用意はなく、プーチン氏が5期目を目指すと見込まれる選挙を来年春に控えている状況ではなおさらだと、事情に詳しい関係者は述べた。ロシアの政治システムに対する当局の支配は強いものの、動員令のような措置は戦争を大勢の市民の身近に置くことになり、選挙での圧倒的勝利に向けた動きを難しくする恐れがあると当局者は懸念している。

原題:Russia Seeks 400,000 More Recruits as Latest Ukraine Push Stalls(抜粋)