[ワシントン 12日 ロイター] – 米労働省が12日発表した3月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年比伸び率が5.0%と、前月の6.0%から減速し2021年5月以来の穏やかな伸びになった。ただ、家賃の根強い上昇を背景に基調的なインフレ圧力は継続しており、米連邦準備理事会(FRB)は5月の会合で追加利上げに動く公算が大きいとみられる。

前月比も0.1%上昇と2月の0.4%上昇から鈍化。ガソリン価格の下落が寄与した。食品も横ばいだった。

ロイターがまとめたエコノミスト予想は前月比0.2%上昇、前年比5.2%上昇だった。

バイデン大統領は、前年比インフレ率の急激な鈍化は「国民がほっと一息つける余地がさらに生まれた」ことを意味すると述べた。ただ、全てのインフレ指標は依然としてFRBが目標とする2%の2倍以上の水準にある。

BMOキャピタルのシニアエコノミスト、サール・グアティエリ氏は「総合インフレの落ち着きは、FRBに一定の安心感を与えるだろう。エネルギー価格は下落、食品は横ばいとなり、インフレ期待押し下げに寄与する見通しだ」と述べた。同時に「サービスのインフレは依然高止まりしており、主にタイトな労働市場の状況が要因だ」と述べた。

ガソリンは前月比4.6%下落。

家庭で消費される食品の価格は0.3%下落し、20年9月以来初めてマイナスに転じた。卵の価格は10.9%急落、肉や果物、野菜も下落した。一方、外食関連は上昇した。

持ち家の帰属家賃は0.5%上昇。ただ、伸びは前月の0.7%上昇から鈍化し、昨年4月以来の小幅な伸びにとどまった。

単独の指標では、家賃は下落傾向にあることから、住宅インフレは沈静化が続くと予想される。CPIの家賃指標は単独指標に遅行する傾向がある。家賃上昇の鈍化により、ゴールドマン・サックスのエコノミストは6月の利上げ予測を撤回した。

EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「住宅需要の急減を背景に住宅コスト上昇が大幅に鈍化するため、今後数カ月は強いディスインフレ圧力が働くことを示唆している。減速がいったん始まれば、下方サプライズがあるかも知れない」と述べた。

家賃の上昇鈍化により、サービスは0.3%上昇と、2月の0.5%上昇から伸びが縮小した。住居費関連を除くサービスは横ばい。前月は0.1%上昇だった。

航空運賃は4.0%上昇。エネルギー価格は下落したものの、賃金の上昇や春の旅行需要が反映されたとみられる。宿泊費も大きく上昇した。

エコノミストの試算によると、当局者がインフレ抑制の進捗を測る上で注目している住宅以外のコアサービスは0.4%上昇。2月は0.5%上昇だった。

モノのコアは0.2%上昇。衣料品や新車の価格が上昇する半面、中古車やトラックは下落した。

変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比で5.6%上昇と、6カ月ぶりに伸びが加速した。2月は5.5%上昇だった。前月比では0.4%上昇した。2月は0.5%上昇だった。

オックスフォード・エコノミクスのチーフエコノミスト、ライアン・スウィート氏は「インフレ率は徐々に鈍化するが、年内は高止まりすると予想する。市場の利下げ予想に反し、FRBは年内、金利を高水準に維持する可能性が高い」と述べた。

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