ロシアでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」を迎えました。

首都モスクワで行われた記念の式典で演説したプーチン大統領は、ウクライナへの軍事侵攻を正当化し、今後も続ける姿勢を強調しました。

ことしの戦勝記念日の式典やプーチン大統領の演説の内容を、専門家はどう見るのか。

防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事に聞きました。

●軍事パレード中止の都市も なぜ?

Q.ロシアの一連の行事の中で、軍事パレードが中止された都市もありました。なぜなんでしょうか。

“軍事的な余力がなくなってきている”

A.先日、首都モスクワのクレムリンの上空で、無人機が爆発する事件がありました。こうした安全上の問題のほかに、今ウクライナで戦闘を続けているロシア軍の軍事的な余力がなくなってきていることも関係してるのではないかと思います。

ロシア全土で軍事パレードができなくなり、モスクワではせめて去年並みの規模で実施しようとしましたが、結果的に去年の規模よりも小さくなったとみられます。

“追い込まれたパレードになった印象”

モスクワの軍事パレードも、戦車は第2次世界大戦で使われた古い「T34」1両だけが展示されましたが、それ以外の最新式のものや、実際にウクライナで戦闘で使われているものなどの展示はありませんでした。

プーチン大統領としては、最低限の軍事パレードを実施して、年に1回の愛国的イベントを何とか乗り切って、政治的な体面を保とうとしたのでしょうが、軍事的には追い込まれたパレードになったという印象を持ちました。

●プーチン大統領演説 どう聞いた?

Q.演説でプーチン大統領は、今後もウクライナへの軍事侵攻を続ける姿勢を強調しました。どう聞きましたか?。

“長期戦の構えで軍事侵攻続ける意思示す”

A.去年の演説と比較して、特段新しい要素はありませんでしたが、去年と同じ3つの要素が演説の中で確認されています。

1つ目が、今の軍事侵攻を正当化するフレーズ、2つ目は、引き続き西側を批判し、これは西側が仕掛けた戦争だというレトリックを強めていること。それから3つ目は、国民の結束を促す発言です。

これら3つの要素により、プーチン大統領はきょうの演説の中で、ロシアとしては長期戦の構えで、軍事侵攻を続けていくという意志を改めて示したのではないかと思います。

“淡々とした新鮮味ない演説”

ただ、クレムリン上空の無人機攻撃などに言及はありませんでした。

ウクライナや欧米諸国に対するかなり強硬な発言が飛び出すのではないかという見方もありましたが、来年3月には大統領選挙が今のところ予定されていて、必要以上にロシア国内、国民をあおってしまうと得策ではないという観点から、去年並みの淡々とした、ある意味、新鮮味のないような演説にとどまったのではないかと思います。

●「ワグネル」 バフムトから撤退するつもりはあるの?

Q.ロシアの民間軍事会社「ワグネル」のプリゴジン氏の意向がはっきりしないようにも見えますが、バフムトから撤退するつもりはあるのでしょうか。

“今後も戦闘を続けていく姿勢”

A.ワグネルは、民間軍事会社で、ロシアの中では非合法組織ですが、今回のウクライナ戦争では、バフムトの制圧など、ロシア軍以上の戦果を示す存在です。

プーチン大統領は5月9日の対独戦勝記念日までにバフムトの完全掌握を目指していたと伝えられ、大半はロシア側が掌握しましたが、完全掌握はできなかった。

プリゴジン氏としてはその責任をロシア軍に転嫁して、軍から砲弾などの供給を得られなかったからうまくいかなかったという発言ではないかと思います。ただ結果的にロシア軍からは砲弾が提供されたと主張していて、今後も戦闘を続けていく姿勢を見せています。

“軍と足並みに乱れ 戦闘に悪影響か”

ですからロシア軍とともに、プーチン大統領に戦果のアピール合戦をしているようなところがあり、今後も軍との足並みの乱れが、ロシア側の戦闘に悪影響を及ぼす可能性があるのではないかと思います。

●今後の戦況は?

Q.兵器不足などによりロシア側の劣勢が伝えられる一方で、ウクライナ側は反転攻勢に乗り出す構えを見せています。今後の戦況はどうなるでしょうか。

“ウクライナ側の反転攻勢 いつどこで着手するか注目”

A.今後の戦況は攻守逆転し、ロシア側が守りに転じることになります。一般に、攻める側が守る側の3倍以上の兵力が必要ですが、ロシア側も兵士の士気や練度が大幅に低いとみられています。

ウクライナ側は反転攻勢でザポリージャなど南部を奪還し、東部・南部の奪還に弾みをつけたいところですが、ロシア側も今ここの守りを固めています。

ロシア軍の守りが手薄なところをウクライナ側が察知し、そこから反転攻勢を強めていけば、ウクライナ側の奪還の可能性もあると思います。早くて今月から始まるという反転攻勢に、いつどこでウクライナ側が着手するが注目されます。