日銀は15日、16日に開催した金融政策決定会合で現状の異次元緩和を無条件で継続することを決めた。植田総裁にとっては4月の就任以来2回目の決定会合。この間ほぼ3カ月が経過した。日本経済は注目されたベアが大幅に上昇したものの、物価も引き続き上昇傾向を強めている。とりわけ食料品をはじめ生活物資の値上げが相次いでおり、インフレの基調を表すコア消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年比4%を超えている。ここには生鮮食品とエネルギーは含まれていない。これを含めた庶民のインフレ感覚は“狂乱物価”に近いのではないか。多少賃金が上がっても追いつかない。それでも植田総裁は庶民の生活実感には目を向けようとしない。ロイターによると16日の決定会合後の記者会見では、「内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金上昇を伴う形で2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指す」と述べている。何が機動的なのだろうか。

就任から3カ月近くが経過した。まだ、というべきか、もう、というべきか。この間金融政策は何一変わっていない。大企業や財務省、政治家や評論家、マスメディアが評価するゼロ金利政策を何の疑いもなく続けようとしている。まるで続けることに意義を見出しているかのようだ。強権的な発言が多かった黒田前総裁に比べ、口調は穏やかである。学者ということもあるだろう。記者会見はまるで金融政策の授業のようだ。それはそれで評価するのだが、金融政策の根幹に関わる考え方は黒田前総裁と瓜二つ。結局は同じ字穴のムジナでしかない。異次元緩和の負の側面に目を向けようとしない。そんな中で今朝、目を引いたのはロイターが配信した次の記事だ。「コラム:『動かない日銀』と『止まらない主要中銀』、今年後半に円下落加速か=佐々木融氏」。佐々木氏は世界的にインフレが持続する中で、「(利上げに)動かない日銀』と「(利上げが)止まらない主要中銀」の間で何が起こっているのか、と自問する。その答えは要約すれば「急激な円安」ということだ。円の価値が消失しているのだ。

これを「良し」とする論者が日本では圧倒的に多い。成長率が拡大し、企業の黒字が増え、税収が大幅に増加する。短期的にはそうなる。だがその裏で貿易収支はエネルギー価格の高騰を受けて大幅な赤字に転落、要するに余分な金を海外に支払っているのだ。貿易外収支を加えた経常収支の黒字幅も急減している。日本には2000兆円を超える個人金融資産があるが、これもいずれ海外に逃避するだろう。これが円安の実態なのだ。はやい話、日本中が貧乏になり始めているのだ。それでも植田総裁は金融緩和を続け、貧乏化を加速すると言っている。「賃金上昇を伴う形で2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指す」と繰り返す。まるで知恵のないオオムのようだ。目標実現の切り札は“利上げ”ということに、どうして気付かないのだろう?物価と賃金の好循環を阻んでいるのは、実は日銀なのではないか。植田総裁の“賞味期限切れ”が近づいている。