11月中旬に予定されているAPEC首脳会談にあわせ、米中の首脳会談を実現すべく水面下の調整が続いている。先週は中国の王毅外相が訪米、ブリンケン国務長官、サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官と会談した。それだけではない。バイデン大統領自ら王毅外相との会談に応じている。大統領が他国の外相と個別に会談するのは異例だとメディアは伝えている。首脳会談実現に向けた米国の意欲の強さを示した格好だ。で、結論はどうなったか?王毅外相の言葉を借りれば、「平坦ではない」(時事通信)。簡単には応じないという意味だろう。言葉は悪いが中国としては、首脳会談実現に向けて習近平国家主席をできるだけ高く売りたいのだ。ウクライナ戦争に加えてイスラエル・ハマス戦争が勃発した。南シナ海では中国とフィリピンの対立が激化している。世界経済の先行きも不安だ。米国としてはなんとしても中国を惹きつけておきたいところ。

時事通信によると王氏は26、27両日、「ブリンケン国務長官と計7時間以上にわたり会談した」という。サリバン氏との会談は約3時間に及んだとある。合計すれば10時間だ。通訳を挟んだかどうかわからないが、外相同士の会談としても異例の長さだ。何が話し合われたのか。米側の説明によると、ブリンケン氏は東・南シナ海周辺での中国軍による「危険な行動」への懸念を伝達。台湾に関しては、一方的な現状変更に反対し「台湾海峡の平和と安定の維持」を重視する考えを改めて強調したと、時事通信は伝えている。中国側の説明はない。毎度のことだが中国には情報開示という認識はないのだ。28日に王氏はワシントンで開かれたイベントに参加。冒頭にある通り米中首脳会談について、「(実現への道は)平たんではない」と述べている。これは中国外務省が発表したもの。「王氏の訪米を経て、首脳同士の対話再開への楽観論が広がる中、米側にくぎを刺した形だ」(時事通信)。

米中とも国内外で難問が山積している。バイデン大統領は大統領選がスタートしているにもかかわらず支持率が低迷、ガザ紛争でイスラエルのコントロールに手を焼いている。メキシコでの国境では不法移民が急増。トランプ前大統領の“おはこ”である壁建設を打ち出すなど、政策的には支離滅裂。ウクライナ、イスラエル支援に向けて莫大な戦費調達を迫られてもいる。なんとしても習近平主席の協力を得たいのだろう。対する中国。不動産不況は悪化節一途、国債大量発行で景気刺激策に重い腰を上げようとするも、膨大な不良債権を抱え経済対策の効果は一向に上がらない。デフレの足音も忍び寄る。そんな中、党幹部の解任が相次いでいる。鬱陶しいことにプーチンがひつように言い寄ってくる。タイミング悪く、国民的に人気のある李克強前首相が急死した。おそらくいま、自らの不人気ぶりを実感しているだろう。両首脳とも本心は会談実現。問題は両方のメンツをどう立てるか、これが国際政治の実態だろう。

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