最近のニュースを見ながらこの人物の登場に驚いている。前財務長官のムニューシン氏だ。正式な名前はGoogleによると、スティーブン・ターナー・スティーブ・ムニューシンとある。長い。それはともかくとしてこの人、トランプ前大統領時代に財務長官を務めていた人だ。経歴を見ると元々は大手金融機関のゴールドマン・サックスに入社、これが彼のキャリアーの出発点になっている。その後金融マンとして実績を積み、2016年の大統領選挙の年にトランプ陣営の財務責任者に就任している。この時にトランプ氏の目に止まり、政権発足と同時に財務長官に就任した。そのムニューシン氏、昨日Bloombergが配信した記事によると、米国でいま問題になっているTikTok(ティックトック)の買収に乗り出したというのだ。米下院は13日に同社の利用を禁止する法案を可決している。同法案によるとTikTokは米資本に売却するか、米国から撤退する以外に生き残る道はないという。

そこに名乗りをあげたのがムニューシン氏というわけだ。機を見るに敏なのか、民主・共和両党を横断する政治家との出来レースなのか、あまりにもタイミングよく名乗りをあげる人だという印象を受ける。中国資本のTikTokに異議を唱えたのはトランプ前大統領だ。それ以来米議会には「TikTokが米国のユーザーにとって安全保障上の脅威になっている」との懸念が根強く残っている。なぜなら中国は、「国家の安全保障に絡むいかなるデータ」も、自国企業に対し政府との共有を義務付けているからだ。その懸念が米議会下院で法律となって実現した。TikTokの経営陣がこの法律にどう対応するかわからない。法律は下院を通っただけで、上院での見通しがはっきりしているわけではない。そんな中でムニューシン氏はいち早く買収に名乗りをあげた。そういえばこの法律にはトランプ氏自身も、かのイーロン・マスク氏も懸念を表明していた。

ムニューシン氏はきのうCNBCとのインタビューで、TikTok買収について「パートナー候補と協議している」と語っただけ、具体的な内容については明言したわけではない。とはいえ同氏は少し前、経営危機に陥っていた地銀持ち株会社のN Y C B(ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ)に約10億ドルを出資、これを好感して株価が急騰した。ムニューシン氏を含む投資家は一夜にして莫大な利益を手にしたと、Bloombergが伝えている。混乱や危機に際して機敏に動き回る、これは金融マンの資質を測る一つの尺度かもしれない。とはいえタイミングが良すぎるせいで、「裏で政治家と連携しているのではないか」、そんな疑念を抱きたくなる。その一方でムニューシン氏はTikTokについて、「素晴らしいビジネスだ」、「米国の企業が所有すべきだ」、「中国も国内で米国企業にこのようなことはさせないはずだ」と語ったとある。良いものはいいということか・・・。

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