Josh Wingrove、Joe Deaux

  • 対米外国投資委員会が月内に大統領に審査結果を伝える必要
  • 買収阻止なら日鉄とUSスチールは訴訟を起こす構え-関係者
Nippon Steel Corp.'s Kashima Works Steel Mill
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

バイデン米大統領は日本製鉄による141億ドル(現行レートで約2兆1400億円)でのUSスチール買収計画について、国家安全保障を理由に正式に阻止する計画だと、事情に詳しい複数の関係者が語った。

  関係者によれば、日鉄の買収案の審査を進めてきた対米外国投資委員会(CFIUS)は今月22日ないし23日までにバイデン氏に結果を伝える必要がある。関係者は審査プロセスが機密扱いだとして匿名で明らかにした。

  CFIUSの審査結果がどうなるかは明らかになっていない。しかし、大統領への通知は少なくともCFIUSメンバーの1人がこの取引にリスクがあるとみていることを示唆している。関係者の一部によると、バイデン氏が買収阻止を決定した場合、日鉄とUSスチールはこのプロセスを巡り訴訟を起こす構えだという。

  USスチールの広報担当アマンダ・マルコウスキ氏は「この取引はその是非に基づいて承認されるべきだ」と述べた。10日の米株式市場でUSスチールは一時22%安を付けた後、9.7%安で通常取引を終えた。

  日鉄は発表文で、「政治が引き続き真の国家安全保障上の利益よりも重きをなすのは不適切であり、日米の不可欠な同盟を重要な基盤としている点を踏まえると特にそうだ」とした上で、「日本製鉄は米国の正義と公正さおよびその司法制度を引き続き信じており、必要であれば、USスチールと協力して公正な結論に至るためにあらゆる利用可能な措置を検討・行使する」としている。

  かつて米国を代表する企業だったUSスチールの買収計画は激しい政治論争を招いてきた。USスチールはこの買収が事業存続に不可欠だとし、破談になった場合は本社をペンシルベニア州から移転し、一部の事業を閉鎖する可能性があると警告している。

  ペンシルベニア州出身のバイデン氏はかねて売却に反対の意向を示しており、同社は米国資本の企業として存続すべきだと主張してきた。しかし、この取引を阻止するとは明言していない、一方、トランプ次期大統領は取引を阻止すると繰り返し表明している。

  大きな政治的影響力を持つ全米鉄鋼労働組合(USW)も一貫して日鉄による買収計画に反対を表明してきた。

  ホワイトハウスのシャーマ報道官は声明で、「USスチールが米国内で所有・運営されることが極めて重要だという大統領の立場は当初から変わりない」とし、「CFIUSのプロセスは今も継続中だ」と説明した。

  この買収計画を巡り強い政治的圧力が加わる中、日鉄は支持拡大に取り組んできた。同社は10日、買収が実現した場合、USスチールの全従業員に5000ドルの賞与を支給する計画を別途発表した。

  CFIUSは9月、買収計画を再申請する許可を与え、実質的に審査は延長された。審査終了期限は今月まで延期され、大統領選挙後に買収計画が前進するのではないかとの見方が浮上したが、バイデン氏は9月27日、「私は考えを変えていない」と発言した。

  バイデン氏がいつ発表を行うかは不明。大統領は審査結果が伝えられてから15日以内に決定を発表しなければならない。一部関係者によると、CFIUSの審査がさらに延長され、決定が次期政権に委ねられることはない見通し。

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原題:US Steel Drops as Biden Plans to Block Sale to Nippon Steel (2)(抜粋)

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▽政治が真の国家安全保障上の利益に勝る状態、適切ではない=バイデン氏の買収阻止報道で日鉄<ロイター日本語版>2024年12月11日午前 7:41 GMT+9