政府は作日開催された「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の首脳会合で、イラン戦争を契機に不安が高まっている東南アジア諸国を対象に、石油の輸入や備蓄促進に関連して総額1兆6000億円にのぼる金融支援を行うと表明した。東南アジアではここに来て石油不足が顕在化し始めている。豊富な備蓄がある日本に対して備蓄分の融通を求める動きもあるようだ。こうした中で高市総理は国内備蓄を融通する代わりに、石油の輸入先多様化や備蓄促進にかかるコストを金融支援することにしたもの。時事通信によると政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)などを活用。日本に比べて信用力で劣るアジア各国の企業は原油調達などの資金の工面に苦慮しており、融資を通じて購入を後押しする。支援総額は、原油の調達コストに換算すると、東南アジア諸国連合(ASEAN)が約1年間に輸入する最大12億バレルを賄える規模だという。国内でも医療用物資の不足が懸念されている。東南アジアはこうした物資の輸入先でもある。現物は融通しないが、見返りに金融支援を行うということだろう。
首脳会合はオンラインで開催された。それにしてもAZECとは聞きなれない名前だ。こういう共同体があるのを初めて知った。調べてみると岸田政権時代に創設されたとある。ゼロエミッションの名の通り、脱炭素を促進するための組織として設立だれた。参加しているのは11カ国(豪州、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)。域内のカーボンニュートラルに向けた協力のための枠組みだ。イラン戦争を契機とした石油の供給不安の台頭を機に、日本政府はこの枠組みを使って金融支援に乗り出すということのようだ。東南アジア重視の日本政府だ。困っている域内の国々を支援するのは当然のとこだと思う。国内で不安が昂じている医療用の品々も多くが、原材料や製品をこうした国々から輸入している。金融支援は東南アジアの国々への協力であると同時に、自国の経済安全保障に役立つということだ。日本式に言えば「情けはひとのためならず」ということか。
それにしても1兆6000億円という支援額の規模には驚く。金融大国の住人である。この規模の支援で驚く方が、日本の実情を理解していないのかもしれない。トランプ関税に関連した対米投資の80兆円にも肝を潰した。総理の口から巨大な金額がいとも簡単に表明される。対米投資にもJBICが絡んでいた。岸田政権の時代だったと思うが、ウクライナへの金融支援が知らないうちに1兆円規模で実施されている。国会での議論は全くない。国民に対する詳しい説明もない。主要メディアが記事にする。それだけだ。ほとんどのメディアがまるで他人事のように短い記事でお茶を濁している。国内では責任ある積極財政の一環として、国内投資拡大が叫ばれている。成長戦略や6月にまとめる「骨太の方針」作成に向けて議論が進んでいる。金融支援そのものに反対するつもりはないが、巨額な金融支援に関する情報が少なすぎる気がするのだ。海外向け投融資は議論もなくすんなり決まる。これに対して国内投資は遅々として進まない。これは日本人の「死角」ではないのか。