世界中がこの1週間トランプ関税に振り回された。株式や債券市場が大混乱に陥り、インフレの再加速、景気後退懸念など世界経済の先行きに巨大な暗雲が立ち込めた。この先どうなるか、誰もすぐに答えられない。現状を直視しながら次の対策を模索するしかない。E Uや中国は強力な対抗手段を匂わせる。だがそれも抜本的な解決策にはならないだろう。平和を望みながらも戦争が起こる。保護主義に保護主義で対抗すれば経済は破滅へ進む。トランプ氏の言いなりになれば問題は解決するのか。それも違うだろう。N Yダウは昨日1600ドルを超える暴落となった。この暴落を象徴するのがアップルだ。同社の最大のサプライチェーンは中国。中国に対する課税は総額で54%に達する。米中関係の悪化で同社は生産ラインの一部をインドやベトナム、マレーシアに移転した。移転先であるベトナムの関税は46%に設定された。企業努力など水の泡。アップルにとってはまさに“踏んだり蹴ったり”だろう。

関税政策の推進役の1人であるラトニック商務長官は昨日、ブルームバーグテレビとのインタビューで「諸外国に対する新たな関税を軽減するには、それらの国々が米国製品への輸入規制や障壁に対処する必要がある」との考えを示した。そして「非関税貿易障壁はモンスターであり、退治しなくてはならない」と強調している。非関税障壁の最大のターゲットは日本なら消費税であり、EUならVAT(付加価値税)ということになる。考えてみれば消費税も関税も似たようなものだ。消費税の対象は国内の消費者だが、関税は生産者と消費者の双方が対象になる。物品の生産者や生産国に外交的な圧力をかけるという意味では、関税の方がより政治的と言っていいだろう。いずれにしても最終的には消費者が負担することになるわけで、いずれも消費者いじめの税制だ。家計を豊かにすることが“富国”の意味だとすれば、どちらも反・富国の悪税だ。

トランプ米大統領は昨日、「仮に他国・地域が何か『驚くべき』ものを提示することができれば、関税引き下げにオープンである」と語った。柔軟な発言のように見えるが、そうではないだろう。なんとなれば「関税はわれわれに交渉のための偉大な力を与える」と述べた上で、「あらゆる国がわれわれに接触してきている」と誇らしげに説明している。まるで王様気取りだ。権力を弄んでいるようにしか見えない。とはいえラトニック長官は以下のような説明もしている。「経済諮問委員会(CEA)のエコノミストや米通商代表部(USTR)のスタッフは数十年にわたって外国の貿易障壁を精査しており、その分析が2日にトランプ大統領が発表した課税の基礎になった」と。要するに政党ではなく国家の中枢が長年にわたって、同盟国を含めて各国の税制を研究してきたのだ。トランプ関税の矛先が向かうのは中国だけではない。アメリカを代表するテック企業や同盟国も含まれている。それがこの問題を限りなく難しくしている。