▽【米国市況】S&P500小反発、国債利回りスティープ化-142円台
Cristin Flanagan
- パウエルFRB議長を「一刻も早く解任すべきだ」-トランプ氏
- EUとの貿易合意成立にトランプ氏自信、時期は明言せず
17日の米株式市場では、S&P500種株価指数が小幅に反発。欧州連合(EU)との貿易合意成立にトランプ米大統領が自信を示したことなどが材料視された。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5282.70 | 7.00 | 0.13% |
ダウ工業株30種平均 | 39142.23 | -527.16 | -1.33% |
ナスダック総合指数 | 16286.45 | -20.71 | -0.13% |
米市場は18日、グッドフライデー(聖金曜日)の祝日で休場となる。S&P500種は週間ベース(17日までの4日間)で1.5%安。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が前日、市場救済の可能性を否定したことが影響した。
ナスダック100指数は3連休を控え、前日終値を挟んだ推移に終始し、ほぼ変わらずで終了。週間では2.3%下げた。
トランプ氏はEUとの貿易合意の見通しについて、具体的な時期には触れず、「いつかは」実現すると述べるにとどめた。米国とウクライナの鉱物資源協定については24日に署名すると述べた。
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トランプ大統領はこの日、パウエルFRB議長の「解任は一刻も早く実現すべきだ!」と投稿。FRBは今年これまでに利下げをしておくべきだったし、いずれにせよ今すぐ利下げすべきだと主張した。
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パウエル氏は前日、まずは貿易戦争が物価に及ぼす影響を見極めたいとの姿勢を示し、市場救済を望んでいた一部投資家の期待に水を差した。
エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏は、市場ではこれまでスタグフレーションに陥るといったパニックは見られていないとし、「トランプ政権に対する信頼が失われる中でFRBへの信認維持」がその背景にあると指摘。関税措置が人々のインフレ期待に影響を及ぼしている状況で、FRBの独立性は今後数日、重大な問題になると述べた。
この日発表された米経済指標では、先週の新規失業保険申請件数が減少し、2カ月ぶりの低水準となった。4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス26.4に低下。全ての市場予想より悪かった。
トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズのチーフ・マーケット・ストラテジスト、キース・ラーナー氏は「ヒストリカル、ファンダメンタル、テクニカルな分析を組み合わせて調べると、もう若干ディフェンシブな姿勢を取るのが良い」とリポートに記した。
個別銘柄では、通期見通しを下方修正した保険大手ユナイテッドヘルス・グループが22.4%安。ダウ工業株30種平均を押し下げた。グーグルの親会社アルファベットも安い。米連邦地裁が、オンライン広告テクノロジー市場の一部について、グーグルに反トラスト法(独占禁止法)違反があったとの判断を下した。
国債
米国債相場は下落(利回りは上昇)。利回り曲線はスティープ化した。翌日の祝日に伴い、この日は米東部時間午後2時までの短縮取引。通常より薄商いの中で大規模なブロックトレードが行われたことや原油相場の上昇も、国債相場に影響を及ぼした。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.80% | 5.9 | 1.25% |
米10年債利回り | 4.32% | 4.8 | 1.12% |
米2年債利回り | 3.80% | 2.9 | 0.76% |
米東部時間 | 16時58分 |
このほか、利回り曲線スティープ化につながった動きとして、トランプ大統領がパウエルFRB議長の解任にあらためて言及したことがある。
また、欧州中央銀行(ECB)が貿易を巡る緊張激化で域内の成長見通しが損なわれているとの認識を示し、欧州市場で短期債が大きく買われたことも、こうした流れを助長した。
外為
外国為替市場では円が対ドルで下落。米国との貿易交渉に臨んだ赤沢亮正経済再生担当相が、為替は議題に上らなかったと述べたことが引き続き材料視された。
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円は欧州時間に一時、対ドルで143円08銭まで売られた。ニューヨーク時間に141円90銭近辺まで下げを縮小する場面もあったが、その後は142円台前半から後半での推移となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1224.68 | -0.96 | -0.08% |
ドル/円 | ¥142.47 | ¥0.59 | 0.42% |
ユーロ/ドル | $1.1363 | -$0.0036 | -0.32% |
米東部時間 | 16時58分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は小幅に下落。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマーク・サイドナー、プラモル・ダワン両氏は、ドルをアンダーウエートするよう助言。米国の「純国際投資ポジションは世界最大のマイナスで、これはグローバル資本で賄われている。この再均衡が進むにつれ、ドルは弱含む可能性がある」と指摘した。
一方、欧州や新興国、日本、英国などの金利エクスポージャーに投資妙味があるとした。
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ユーロはドルに対して軟調。一時0.55%安の1ユーロ=1.1336ドルを付けた。ECBは経済成長への懸念を挙げて政策金利を引き下げた。
ECBは市場の予想通り、中銀預金金利を0.25ポイント引き下げ、2.25%とした。ラガルド総裁は関税と政策を巡る不透明感で、ユーロ圏の経済成長や投資、消費は恐らく下押しされるとの認識を示した。
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マネックス・ヨーロッパのマクロ調査責任者、ニック・リース氏は「6、7、9月とさらに3回の利下げが実施されると予想している」とコメント。「ただ、ユーロが対ドルで強含んでいる今の状態が続いた場合、この予想は金利引き下げ方向に一段と傾くリスクがある」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物は大幅続伸。トランプ米政権がイランのエネルギー輸出への圧力を強めたため、買いが続いた。米国と一部の主要貿易相手国との関税を巡る協議が合意に至るとの楽観的な見方も支援材料。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は3.5%上昇。2営業としては1月初旬以来の大幅高となった。トランプ氏が欧州連合(EU)との貿易合意成立に自信を示したほか、日米の関税交渉は合意成立への期待を高めた。
3連休を前にショートカバーが入ったことに加え、アルゴリズムに基づいて取引する参加者がやや強気姿勢に転じたことも一段高につながった。18日は休場となる。

米財務省はイランから原油を輸入したとして中国の新たな製油所に制裁を科した。ベッセント財務長官はイランの原油供給網を混乱させるため、米国は最大限の圧力をかけると表明した。
米財務省の発表によると、「茶つぼ(ティーポット)」と呼ばれる中国の小規模製油所は10億ドル(約1420億円)余りのイラン産原油を取り扱っていた。一方、イラン政府はトランプ政権が「後になって条件を変える」場合、核協議が破綻する可能性があると警告した。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「マクロ経済の背景は依然として複雑だが、地政学的な緊張の展開次第で、相場上昇を増幅させるか、あるいは上昇を完全に止める可能性もある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は、2.21ドル(3.5%)高い1バレル=64.68ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント6月限は3.2%高の67.96ドル。
金
ニューヨーク金相場は反落。スポット価格は最高値を更新する場面があったものの、日米関税交渉への楽観的な見方を受け、下げに転じた。
前日には2年ぶりの大幅高となっていたが、この日は一時1.8%下落。2国間としては最初の貿易協議から前向きな兆候が伝わったため、金融市場のセンチメントが改善し、金売りが優勢になった。
トランプ大統領は日本の代表団との間で「大きな進展」があったと自身のSNSに投稿した。ただ、交渉は即時の関税停止には至らなかった。赤沢亮正経済再生担当相は、関税実施の90日間の猶予期間内に合意を目指すため、両国間で協議を続けていくことを確認した。
それでも、ABCリファイナリーの機関投資家部門グローバル責任者、ニコラス・フラッペル氏はトランプ氏の関税政策を巡る先行き不透明感と世界的な貿易戦争の可能性が金相場を引き続き支えていくとの見通しを示した。
「関税の規模と範囲に関する不透明感、米政権の戦略計画の不明確さ、そして米国の貿易相手国がどのように対応するかという点がある」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時28分現在、23.67ドル(0.7%)下げて1オンス=3319.45ドル。一時は3357.78ドルまで上げ、最高値を更新した。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は18ドル(0.5%)安い3328.40ドルで引けた。
原題:Stocks Rebound Fizzles as Trump Goes on Offensive: Markets Wrap(抜粋)
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