ウクライナ戦争。戦局はこれまで圧倒的にロシアが優勢と見られてきたが、ここに来て大きな変化が生じている。これまであまり報じてこなかったテレビ局も、ウクライナ軍によるドローン攻撃が大きな成果を上げていると盛んに伝えている。ロシアとウクライナの間で何が起きているのか、最近の情勢を整理してみた。

現在目立つのは、ウクライナによるドローン攻撃だ。遠距離にある軍事施設や製油所、防空設備といった特定の施設を対象に、執拗(しつよう)な攻撃が繰り返されている。ロイター通信は今朝、ドローン攻撃で黒煙を上げるロシア最大規模の情報通信施設の写真を公開した。これまでロシアの圧倒的優勢が揺るぎないと思われていた戦況に、重大な転換点が見え始めている。

戦局が変化しつつある背景について分析すると、主に以下の点が挙げられる。

AI搭載ドローンの大量生産: 低コストのドローンが大量生産され、ロシア国内の広範囲に点在する重要拠点(製油所や兵器庫)をピンポイントで攻撃可能になった。

高い費用対効果: 1機あたり数千ドル程度のコストで、数十億ドル規模の損害を与えることが可能であり、極めて効率的な戦術となっている。

補給網の寸断: ロシア軍の補給網に対し、陸上だけでなく空からの長距離攻撃を加えることで物資供給を断ち切り、前線維持能力を徐々に低下させている。

こうした攻撃は、単なる物理的打撃以上の意味を持っている。要するに、「『ロシア国内は安全』というプーチン大統領の国民への約束を覆し、ロシア指導部に政治的な圧力をかける狙いがある。政権の危機管理能力に対する疑念を国内に植え付け、戦争終結に向けた交渉のテーブルに着かせるための戦略的手段」と言えるだろう。

ウクライナは、独裁者プーチン氏を相手に多角的かつ多面的なアプローチを仕掛けている。ドローン攻撃で物理的な打撃を与えるだけでなく、ロシア国民の動揺を誘い、「ロシアは決して無敵ではない」という現実を突きつけているのだ。

最近、司馬遼太郎著『坂の上の雲』(全8巻、文春文庫)を読了した。兵力、機動力、軍事力で圧倒的に劣る日本が、いかにして世界最大級の威容を誇るバルチック艦隊を撃滅できたのか。理由は明白である。当時のロシアは強大に見えて、内実は「弱かった」からだ。

ロマノフ王朝最後の皇帝・ニコライ2世の絶対的権威のもと、バルチック艦隊のロジェストヴェンスキー司令長官をはじめ、軍人、官僚、学者といった指導層のすべてが皇帝におもねり、その意向を忖度(そんたく)し、あたかもロシアが強国であるかのように装っていた。国家も軍隊も、実体は空洞化していたのである。

独裁者・プーチン氏の現在の体制も、これに酷似している。批判者は排除され、忠臣だけが周囲に集まり、自分に都合のいい情報だけで戦争を評価する。自らの間違いに気づくことはなく、まるで「裸の王様」のようだ。経済が低迷し国民生活が窮地に陥っても顧みず、財政破綻寸前であっても軍事予算だけは確保する。しかし経済制裁の影響か、実態は兵士への給与支払いさえ滞っているとも聞く。

そんな指導者の末路は誰の目にも明らかだ。ここで一つの疑問が湧いてくる。これまでゼレンスキー氏を小馬鹿にし、無能ともいえるプーチン氏に寄り添ってきたトランプ大統領による「停戦仲介」の行方である。果たして、このままロシアの肩を持ち続けるのか。そんなことをすれば米国民からの評価は、イラン政策以上に厳しくなるだろう。それを察知したのか、トランプ政権はウクライナに対して、にじり寄りを始めているようにも見える。果たして、どうなるのか……。