▽「警視庁はフジテレビと同じ」浜田敬子さんが憂える日本型組織の病根

問題の根幹は、フジテレビと全く同じ――。
ジャーナリストの浜田敬子さん(58)は、警視庁公安部による冤罪(えんざい)事件「大川原化工機事件」について、「組織の同質性」が背景にあったと指摘する。組織と不正の関係を取材しているジャーナリストに、日本型組織が抱えるリスクを聞いた。【聞き手・遠藤浩二】
大川原化工機冤罪事件に各界の人たちは何を感じたのか。
5月に予定される国家賠償請求訴訟の2審判決を前に、著名人たちのインタビューを随時アップします。
浜田さんは記事の後半で、メディアが警察批判に消極的なのは構造的な問題があるからだと指摘しています。
このシリーズではミステリー作家の深町秋生さん、時事芸人のプチ鹿島さん、ジャーナリストの青木理さんのインタビューがあります。
「組織守る」が最優先に
――同質性が高い組織とはそもそも、どのようなものでしょうか。
◆たとえば意思決定層が生え抜きで、年齢が高い男性に偏っていることです。
同じ釜の飯を食ってきた人、同じ価値観の人を重用する組織ですね。日本型組織の特徴でもあります。
同質性の高い組織が抱えるリスクとして、自分たちの成功体験を踏襲する▽不都合な情報を入れない▽内部からの批判や忠告に耳を傾けない▽集団内の規律を重視しすぎて逸脱する人を許さない――といったことが挙げられます。
ずっと同じ組織にいると、個人の価値観は組織の論理と一体化していきます。
つまり、「何が正しいのか」よりも「どうしたら組織を守れるのか」が優先されてしまう。
不正が起きても隠し、組織が健全に運用されにくいのです。
最近ならば、フジテレビと兵庫県の幹部がその典型と言えるでしょう。
内部告発を受け止めない組織は「腐る」
――大川原化工機事件でも、立件に慎重な部下の意見を上司が退けたり、法廷で捜査を批判した現職警察官3人の証言を「臆測」「虚構」と信用性を否定したりしました。
◆警視庁側は、3人の法廷での証言を「捜査幹部らとの人間関係の不和」が原因と主張していますが、あなたたちの方が感情的で、合理的に判断できなかったんじゃないですかと思いました。
3人は組織を良くしようと思って証言したはずで、これは一種の内部告発でしょう。
内部告発は組織を健全にするために必要なものなのに、それを受け止められない組織は本当に腐ると思います。
コンサルティング会社「KPMG FAS」が日本企業の不正に関する実態調査をしています。
その2024年版によると、不正が発覚した企業のうち、その経緯が「内部からの通報」だったのが58%に上っている点は注目すべきことです。
現在、民間企業では内部告発の件数が年々増えています。これは昔に比べて不正が増えたのではなく、告発する人が増えたということでしょう。
一昔前だと、不正や不祥事があった場合、「まずい、隠そう」となっていました。
いまは1年間の内部告発件数や、どう対処したかまで公表する企業が…
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