トランプ大統領が対中国に対する厳しい姿勢をいきなり変更した。水面下の交渉で何らかの変化があったのだろう。「145%の関税は高すぎる。関税は下がるだろう」、臆面もなくきのう記者団に語った。ウクライナ和平交渉も「仲介から手を引かざるを得ない」と数日前に語っていたが、きのうは「今週中に合意が実現するだろう」と急変した。今日のニュースはどこを見ても交渉難航のムードが漂う。暴落暴騰の乱高下を繰り返すマーケット。きのうのN Yダウは1000ドル超の暴騰。パウエルF R B議長の解任なしと、対中関税緩和見通しが好感された。トランプ陣営にマーケットの乱高下を楽しむ余裕はないだろうが、明日はまた急落に転ずるかも。オーバルルームでの大統領と記者団との駆け引きは連日続いている。レビット報道官の記者会見も毎日行われている。にもかかわらずこの騒動、ゴールはいまだにはっきりしない。

そんな中でフリージャーナリスト・山口敬之氏は自身のYouTubeで、トランプ関税の真の狙いは「新たな自由貿易のブロック圏づくり」と視る。なんのことはない新TTPだ。自由貿易の促進が目的だが、裏に潜んでいる秘めた狙いは対中国包囲網。CPTPPと改称された旧TPPの正式名称は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)」。山口氏の指摘が正しいとすれば、旧TPPと目的も狙いも全く一緒。違いがあるとすれば新TPPはトランプ大統領が主導していること、ただそれだけ。TPPは2005年にブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4カ国によって署名された環太平洋戦略的経済連携協定(TPSEP)が大元。これを拡大しようとオバマ元大統領が提起して議論が始まった。最初は米国も積極的な推進論者。

大統領がトランプ氏に代わり米国は離脱する。理由はオバマ嫌いか。その後日本が主導してオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本など11カ国が署名して2018年12月30日に発効した。これがCPTPPだ。将来的に関税ゼロを目指す方針が盛り込まれている。このほか、国有企業が主体の国は参加できないなど、かなり高度で厳しい内容の協定だ。早い話中国排除の協定と言っていい。トランプ氏の狙いと一緒だ。側近のマスク氏は先ごろ、「EUと米国は将来的に関税をゼロにすべきだ」と発言して物議を醸した。この発言の背景を日本のメディアは一切報道しないが、山口氏はトランプ氏の狙いを代弁したものと読む。イタリヤのメローニ首相もそこを弁えている。大統領の態度急変は、敵と味方の区別が付いたことを意味しているのかもしれない。MAGAの赤い帽子をかぶってはしゃぐ赤沢氏、「譲れないものは譲れない」と渋面をつくる石破総理。メローニ・トランプ会談の意味を理解しているのだろうか。石破総理の元には李強首相から親書が届いている。日本は米国、中国、どっちの味方・・・。