▽米、英と貿易巡り合意 関税交渉で初 自動車税引き下げ・10%関税維持<ロイター日本語版>2025年5月9日午前 10:03 GMT+9

[ロンドン/ワシントン 8日 ロイター] – トランプ米大統領とスターマー英首相は8日、電話で会談し、二国間貿易協定での合意を発表した。米国は英国からの輸入品に対する10%の基本税率を維持するが、英国は米製品に対する関税率を5.1%から1.8%に引き下げ、米製品の市場アクセスを拡大する。
両首脳はこの合意を「画期的」と称賛した。
トランプ大統領はホワイトハウスの大統領執務室から合意を発表。主要貿易相手国との関税交渉で初の合意となる。
合意の下、英国製の自動車に対する27.5%の関税は10%に引き下げられる。引き下げ後の関税率は、昨年米国に輸出された英国車のほぼ全数に相当する10万台に適用される。現在25%の鉄鋼に対する関税は撤廃される。
英国は米国製品に対する関税を5.1%から1.8%に引き下げるほか、牛肉など農産物の一部の市場を開放する。
両国はまた、アルミニウムと鉄鋼の貿易圏創設や医薬品サプライチェーン確保も目指す。
トランプ大統領は記者団に対し、英国は非関税障壁を削減するとした上で、「われわれに素晴らしい市場が開かれる」と語った。
オンラインで会見に参加したスターマー首相も、80年前の欧州での第二次世界大戦終結時刻に合わせた合意発表に「実に素晴らしい歴史的な日」と称賛。「重要な協定で、両国の貿易を促進するだろう。雇用を保護するだけでなく、市場アクセスを開放することで雇用を創出する」と述べた。
ラトニック米商務長官によると、英国は100億ドル相当の米ボーイング<BA.N, opens new tab>制の航空機を購入する見込み。ただ、ホワイトハウスが発表した資料には「航空機部品」と記載されている。この見返りとして、米国は英航空機エンジン大手ロールスロイス製のジェットエンジンの無関税輸入を許可するという。
ラトニック長官は、合意により米国の製造業者にとって年間50億ドルの新たな輸出機会が創出されるほか、新たな関税措置の維持される部分によって米国は年間60億ドルの新たな歳入が得られるとの試算を示した。
合意発表に先立ち、トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、「われわれの長い歴史と同盟関係を踏まえ、英国が(貿易協定合意を巡る)最初の発表になることは大きな栄誉だ」とし、「他にも多くの協定が交渉の重要な段階にあり、続いて発表されるだろう!」と述べていた。
トランプ氏は英国との合意が他国との交渉の雛形となるとの見方を否定。英国は「良い交渉をした」と述べ、他の多くの貿易相手国は対米貿易黒字が大きいため、最終的な関税はもっと高くなる可能性があると述べた。
英政府関係者は記者団に対し、米国と英国はもっと真剣に取り組むべきことがあると述べ、今回の合意には米国が英国に要求していたデジタルサービス税の見直しは含まれていないと指摘した。
英米企業団体は、自動車を含む多くの製品に米国の10%関税が維持され、英国の輸出業者のコストが上昇することに失望を表明。今回の協定がデジタル経済を含むより深い米英貿易統合のスタートになることを期待していると述べた。
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