トランプ大統領とイーロン・マスク氏の対立が激化している。両氏は昨日、大統領が推進する大型減税法案を巡り、非難の応酬を繰り広げた。Bloombergによると、政府効率化省(DOGE)を退任したマスク氏に対して大統領が、「法案に盛り込まれた電気自動車(EV)に対する税制優遇削減が不満なのだ」と記者団に対して発言。その上で「実に失望した」と語った。これに対してマスク氏は即座に「なんという恩知らずだ」とSNSに投稿。トランプ氏の発言中にリアルタイムで反論するという異例の展開をたどった。その上で「私がいなければトランプは選挙に敗れていた。下院は民主党が掌握し、共和党は上院で51対49の議席数になっていただろう」と主張したのだ。二人の関係は修復不可能のようにみえる。同時に、「なぜここまで大衆の面前で罵倒し合うのだろう」、不思議な気がした。
日本なら二人だけで密室に籠り、お互いの違いを調整し合うだろう。直近の例を挙げれば小泉農林大臣と森山幹事長の関係だ。備蓄米の放出をめぐって農林族のドンである幹事長は内心快く思っていない。それを敏感に感じ取った側近の野村元農林大臣は「党の農林部会に計らずに勝手にやっている」と批判した。このあと“親分”の森山氏は「緊急に対応しなければならなかった。当然のことをしっかりやった」と小泉氏を庇ったのである。小泉氏は農政の改革派であり、対する森山氏はJ A全農を軸とした農政の絶対的な守旧派だ。根っこにある対立関係は以前から続いている。そこを覆い隠しながら、幹事長として小泉氏を擁護する。小泉氏に対する鷹揚な対応は、まるで同氏の器の大きさを示しているかのようだ。だが、本心はまるでわからない。この鷹揚さ・曖昧さが自民党政治の特徴でもある。問題の本質をいつもあやふやにする。
対するトランプ氏とマスク氏の“喧嘩”は明快だ。減税案を盛り込んだ「一つの大きくて美しい法案」をめぐって、財政の健全化を目指してDOGE(政府効率化省)を率いたマスク氏が、「法案に賛成した議員は恥を知れ」(3日、ロイター)と喚く。これに対してトランプ氏は「我々の予算から何十億ドルも節約する最も簡単な方法は、イーロンに対する政府補助金と契約を打ち切ることだ」(5日、Bloomberg)とやり返す。対するマスク氏、「大量の嫌悪すべき無駄が削除されるなら、EVの税制優遇が削減されても構わない」とX(旧ツイッター)で反撃する。どっちもどっちなのだが、まるで劇画のように面白い。日米の文化の違いといえばそれまでだが、財政をめぐる両氏の対立はわかりやすい。対する日本。本質は低価格で放出する随意契約の是非なのだが、表面的には手続き論が議論の対象になっている。こちらも、どっちもどっちなのだが、それにしても・・・。