▽ベッセント長官、交渉期限の延長示唆-通知する関税率は確定と限らず<bloomberg日本語版>2025年7月6日 21:37 JST
Brendan Murray
- 関税率適用は8月1日、各国が譲歩案提示する時間はなおあると発言
- 複数の大型合意は近いが腰の重い対応も見られる-ベッセント長官

トランプ米大統領が発表した上乗せ関税の一時停止期限が9日に迫る中で、米国の主要貿易相手国・地域は合意の最終決着や期限延長の交渉を急いでいる。こうした中、ベッセント財務長官は期限までに合意がまとまらない一部の国について、3週間の交渉期間延長の選択肢が与えられる可能性を示した。
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ベッセント長官は6日に2つのテレビ番組に出演した。CNNでは「今後72時間、非常に忙しくなるだろう」と発言。9日の期限までに残された時間に言及した。
トランプ氏は米独立記念日の週末に記者団に対して「一部の書簡に署名した。7日に送付されることになるだろう」とし、当初は「恐らく12通だ」と表明。相手によって「金額や関税は異なり、内容もやや違う」と続けた。通知先の具体的な相手を問われると、「その発表は7日に行う」と答えた。
ベッセント長官は6日のテレビ出演で、書簡を受け取った国・地域にとって、そこに書かれている関税率が直ちに最終決定になるわけではないことを示唆。関税率の適用は8月1日からなので、合意に近づいていない国が譲歩案を提示する時間はなおあると述べた。
トランプ政権の当局者らは、米政府と合意できなかった国に対しては7月9日の時点で、4月2日に発表した上乗せ関税の高税率を適用するとこれまでに示唆してきた。
ベッセント長官は、進めている協議の件数があまりにも多いため、交渉の最終段階は複雑になっていると認めた。
「最終局面に向けて大変混み合っている」とFOXニュースの番組で長官は発言。「貿易相手国に対し、4月2日の水準に戻す可能性があると通知することで、今後数日や数週間、状況を進展させることになるだろう」と述べた。
一方でベッセント氏はCNNで、8月1日を新たな期限と位置付けることは否定し、書簡を受け取った国は「交渉を急ぎたいならそうすればよい。元の関税率に戻っても構わないのなら、それも選択肢だ」と述べた。
18カ国・地域に重点
ベッセント氏は主要な貿易相手18カ国・地域に重点を置いていると述べ、複数の大型合意がまとまるのは近いとしながらも「相手側で腰の重い対応が多く見られる」と指摘した。
トランプ政権の当局者らはここ数週間、複数の合意が間近に迫っていると述べてきたが、これまでに発表されたのは英国との限定的な枠組み、中国との貿易枠組み合意に関する最終的な理解の取りまとめ、およびベトナムとのディールを取りまとめたというトランプ氏の短い説明だけだ。
トランプ大統領とベッセント長官の直近の発言からは、期限の3日前という段階でも交渉が流動的で、合意成立が見通しづらい様子がうかがえる。
ベッセント氏はCNNで、貿易相手国に米政権として最大限の圧力をかけていると発言。欧州連合(EU)との交渉では「非常に良い進展」が見られていると説明した。EUは米国の物品貿易総額のおよそ5分の1を占める。

トランプ氏はこれより先、通知は4日に始めるつもりだと述べていた。米国は4日が祝日のため週末は3連休だが、米当局者は日本や韓国、EU、インド、ベトナムなどとの交渉に追われている。
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交渉におけるトランプ氏の特徴の一つは、交渉が重要な局面に入ると一方的に脅しをかけることだ。このため同氏が言及した書簡は事実なのか、譲歩をいまだ渋っている貿易相手を不安に陥れる意図なのか定かではない。
各国の交渉状況
トランプ氏は2日にベトナムとの合意を発表した。だが、同国外務省によると、交渉チームは米国側と詳細を巡る詰めの作業を依然続けている。
インドとの暫定合意も成立が見込まれていたが、過去数日間にインドは態度を硬化させたことを示唆。自動車・自動車部品への米国の関税引き上げに対抗し、一部の米製品に関税を課す可能性をちらつかせ始めた。
自動車関税を懸念しているのは韓国も同様だ。韓国は関税引き上げを回避しようと、期限延長を目指す土壇場での交渉を米当局者と続けている。
関連記事:韓国、米関税発動回避へ交渉期限の延長要請-土壇場で巻き返し図る
トランプ氏の看板政策を盛り込んだ大型減税・歳出法が成立し、米株式相場が過去最高値を付ける中で、新たな貿易障壁が投資家の懸念を再燃させる恐れがある。
米企業にとっては外国から財を購入する際のコストが増加するほか、EUなど輸出先の報復措置に遭う可能性もある。
EU加盟国は過去1週間の交渉状況について4日に説明を受け、事務レベルの大筋合意が近いと報告された。
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一方、石破茂首相はあらゆるシナリオに備えていると述べた。NHKとフジテレビの党首討論番組に出演した石破氏は安易な妥協はしないと明言し、「あらゆる場合に」備えつつ国益を守っていく姿勢を示した。
関連記事:石破首相、米関税交渉で「安易な妥協せず」ー自動車税率はゼロ求める
カンボジア政府は4日の声明で、米国と大枠で合意したと明らかにし、近く内容を公表すると説明した。米国がカンボジアに対して打ち出した上乗せ関税率は49%で、最も高い部類に入っていた。同国は米国に繊維製品や靴を大規模に輸出している。
原題:Nations Chase US Trade Deals as Bessent Hints at Longer Deadline、US Trade Partners Chase Deals as Bessent Eyes Busy 72 Hours (1)(抜粋)
▽石破首相、米関税交渉で「安易な妥協せず」ー自動車税率はゼロ求める<bloomberg日本語版>2025年7月6日 10:13 JST
伊藤純夫
- あらゆる場合に備えているートランプ氏が送付する関税の書簡で
- 日本は米国に対する世界最大の投資・雇用創出国、「他国とは違う」
石破茂首相は6日、上乗せ関税の一時停止措置期限が9日に迫っている対米関税交渉について、安易な妥協はしない姿勢を改めて示した。自動車関税は引き続き税率ゼロを求めていく方針。NHKとフジテレビの党首討論番組で語った。
石破首相はNHKの「日曜討論」で、関税交渉について「国益をかけて、ものすごくギリギリの交渉を精力的にやっている」とした上で、「安易な妥協はしない。だから時間もかかるし、厳しいものになる」と述べた。
トランプ米大統領は4日、貿易相手国・地域に対して関税率を記した12の書簡を7日に送付すると表明。具体的な送付先は示していないが、関税率は最大で70%になる見通しだ。1日には、日本に対する一律関税について「30%や35%」といった数字を挙げ、「日本と合意できるとは思えない」としていた。
石破首相はフジテレビの「日曜報道」で、書簡が日本に届いた際の対応を用意しているか問われたのに対し、「あらゆる場合に備えている」と指摘。25%の税率が適用されている自動車について、引き続き税率ゼロを求めていくのかとの質問に、「そうしなければ交渉にならない。最初からここは妥協しますと言っていては交渉にならない」との認識を示した。
日本は世界最大の対米投資国であり、雇用創出国だとも訴えた。他の国が妥協したから、日本も妥協とはならないとし、「他の国とは違うということをよく認識してやっていく」と語った。
内閣官房は5日、米関税措置を巡る交渉を担う赤沢亮正経済再生相とラトニック米商務長官が、同日までに2度にわたって電話会談を行ったと発表した。米関税で日米の立場を改めて確認して「突っ込んだやり取り」が行われ、引き続き米側と精力的に調整を続けていくという。
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▽韓国、米関税発動回避へ交渉期限の延長要請-土壇場で巻き返し図る<bloomberg日本語版>2025年7月6日 18:19 JST
Hyonhee Shin
- 製造分野の提携提案、自動車や鉄鋼の関税撤廃または引き下げ求める
- 交渉期限延長についても協議-7日から関税率通告とトランプ氏
韓国と米国の通商当局者は、トランプ米大統領による各国・地域に対する関税引き上げを回避するため、9日に迫る貿易合意の期限延長について協議した。
韓国産業通商資源省の6日の発表によると、呂翰九通商交渉本部長は5日、ワシントンで米通商代表部(USTR)のグリア代表と会談し、製造業におけるパートナーシップの構築を提案すると共に、自動車や鉄鋼などの製品にかかる関税の撤廃または削減を求めた。
4月に一時停止された米国の関税の再導入期日が数日後に迫っている。トランプ氏は8月1日から一方的な関税率を適用する旨の通告書を、7日から貿易相手国に送付すると表明している。
韓国製品に対する合計25%の関税が発動されれば、既に内需低迷に苦しむ韓国経済への打撃は深刻なものとなる。
トランプ政権による上乗せ関税発動を土壇場で回避するため、呂氏は韓米両国の産業サプライチェーンを一層強化する「互恵的」な製造業協力の枠組み構築を提案した。同時に、最終合意には自動車や鉄鋼を含む一部製品への関税撤廃・緩和を含める必要があると強調した。
韓国産業通商資源省の声明によれば、「双方は、韓国の新政権発足以降の1カ月間、誠実に交渉を続けてきたことを確認し、今後さらに隔たりを縮める必要があるという認識で一致した」という。また、協議の期限延長についても話し合われたと付け加えた。
呂氏の今回の訪米は約1週間で2回目となり、通商協議での遅れを取り戻そうとする韓国側の姿勢を象徴している。李在明大統領の国家安保室長を務める魏聖洛氏も6日、ワシントンに向けて出発した。国家安全保障問題担当補佐官代行を兼務するルビオ国務長官と会談する予定だ。
原題:South Korea Seeks US Trade Deadline Extension as Tariffs Loom(抜粋)