- ホルムズ海峡開放の発表で原油急落、インフレ懸念後退で国債上昇
- S&P500が3日連続で最高値、ナスダック100は約13年ぶりの長期連続高

17日の米金融市場では、イラン戦争が終結に向かうとの期待から世界的にリスク選好ムードが高まり、米国株は続伸した。一方、原油価格は急落。原油高騰によるインフレ懸念が和らぎ、米国債は上昇した。ドルは安全資産としての妙味が薄れ、主要通貨に対して売られた。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 7126.06 | 84.78 | 1.20% |
| ダウ工業株30種平均 | 49447.43 | 868.71 | 1.79% |
| ナスダック総合指数 | 24468.48 | 365.78 | 1.52% |
S&P500種株価指数は3日連続で最高値を更新して終えた。
イランが商業船舶に対してホルムズ海峡は「完全に開かれている」と発表したことで、リスクオンのムードがウォール街を席巻した。数週間に及ぶイラン戦争で、エネルギー市場や株式市場を覆っていた不安の大半が払拭(ふっしょく)された。
これに伴い、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は11%急落し、1バレル=85ドルを割り込んだ。だが、米国とイランの合意の具体像はなお不透明なままだ。
イラン戦争開始後もじり高基調が続いていた株式相場にとって、ホルムズ海峡開放のニュースは最後の大きな足かせを取り除く格好となった。人工知能(AI)を巡る期待の高まりや予想を上回る企業決算に加え、年内に米連邦準備制度理事会(FRB)が追加利下げに踏み切るとの見方が強まっており、S&P500種はすでに月間で2020年以来の大幅高となる勢いだ。
こうした中で海峡の再開が現実味を帯びたことで、石油ショックが長期化し世界経済の成長を下押しするリスクは大きく後退したとエコノミストは指摘している。
半面、合意内容が完全に明らかになるまで慎重姿勢を維持すべきとの声も出ている。
クロスマーク・グローバルのチーフ市場ストラテジスト、ビクトリア・フェルナンデス氏は「こうした見出しに基づいて取引することはしない」とブルームバーグ・テレビジョンで発言。「今後の進展を見極め、その上で来週からポートフォリオのリスクをやや高めるような調整を始めればよい」と語った。
S&P500種株価指数は1.2%上昇。週間では3週連続で3%超のプラスで終えた。ナスダック100指数は13日連騰で、約13年ぶりの長期連続高を記録した。AIブームの波に乗る半導体株の値上がりが追い風となった。

一方、トランプ大統領は、合意に達するまで海上封鎖を全面的に維持すると述べた。トランプ氏はこれに先立ち、イランが対米交渉で重要な譲歩を行ったと主張していた。
ニュースサイトのアクシオスは、凍結されているイラン資金200億ドル(約3兆1600億円)を米国が解除する見返りに、イランが濃縮ウランの備蓄を放棄することが協議されていると報じた。
だが、トランプ氏は電話インタビューで、イランが核開発計画を無期限で停止することで合意し、米国に凍結されている資金も受け取らないと述べた。その上で、恒久的な合意に向けた協議は今週末にも「おそらく」開かれるとの見通しを示した。
エバーコアISIのサラ・ビアンキ氏は、イランの核開発計画の行方など、長期的なリスクはくすぶるとみている。
元通商当局者のビアンキ氏は「イラン危機は暫定的で脆弱(ぜいじゃく)な解決に向かっているもようで、短期的には市場の重しをいくらか軽減するものの、仮に合意に至ったとしても、多くの核心的問題は未解決のまま残るだろう」と述べた。
一方、EFGアセット・マネジメントのダニエル・マレー副最高投資責任者(CIO)は、「中東情勢が落ち着きつつある中、市場の関心は再びファンダメンタルズ、特に始まったばかりの決算に向かうだろう」と指摘。「利益見通しは好調で、堅調なマクロ基調と整合的だ」と語った。
個別株ではネットフリックスが大幅安。前日引け後に示した利益見通しが市場予想に届かなかったことが嫌気された。
米国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。中東情勢の緊張緩和を受けて原油価格が急落し、年内の米利下げ確率が五分五分まで高まった。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.88% | -5.1 | -1.03% |
| 米10年債利回り | 4.24% | -6.7 | -1.56% |
| 米2年債利回り | 3.70% | -7.2 | -1.90% |
| 米東部時間 | 16時43分 |
イランがイスラエルとヒズボラの停戦期間中はホルムズ海峡の開放を続けると表明したことで、広範な和平合意への期待が高まった。
これを受けて、利回りは年限全般で低下した。
ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「ホルムズ海峡開放など、湾岸地域からの前向きな材料が世界的な利回り低下を後押ししている」と指摘。「まだ戦争は終わっていないとの見方が支配的だが、ニュースの見出しからは楽観できる理由は十分にある」と述べた。
ただ、トランプ米大統領が当面はホルムズ海峡での海上封鎖を維持すると発言したことを受けて、債券は上げ幅を縮小する場面もあった。
2年債利回りは、FRBが設定するフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジの上限である3.75%を割り込み、日中ベースで3月18日以来の低水準を付けた。
金利スワップ市場では、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合での緩和織り込みが約16bpと、16日終値時点の約8bpから拡大した。年内の利下げ確率がおよそ五分五分であることを示している。
ウォラー理事はイラン戦争に伴うエネルギーショックの影響で「インフレへのリスクが労働市場へのリスクを上回る場合には」、金利を長期にわたって据え置く必要があるかもしれないとの認識を示した。
根強いインフレや堅調な経済指標を背景に、投資家の間でもFRBの金利据え置きが長引くシナリオへの警戒感もくすぶっており、地政学リスクが後退しても利回りの低下余地は限定的になる可能性がある。
TDセキュリティーズの米国金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「中東情勢の不透明感を巡る材料に対して、市場がいかに敏感に反応してきたかを示している」と指摘。「多くの投資家は、この進展が持続し週末で状況が反転しないよう確認するため、様子見姿勢を維持するだろう」と話した。
為替
ニューヨーク外国為替市場ではドルが下落。中東情勢の緊張緩和で安全資産としての妙味が薄れた。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1192.87 | -0.67 | -0.06% |
| ドル/円 | ¥158.63 | -¥0.54 | -0.34% |
| ユーロ/ドル | $1.1765 | -$0.0016 | -0.14% |
| 米東部時間 | 16時43分 |
イランがテヘランがホルムズ海峡は商業航行に対して完全に開放されていると発表すると、ブルームバーグ・ドル・スポット指数はイラン戦争開始後の上げを全て失う場面があった。一時は0.6%下落し、2月27日以来の低水準に沈んだ。
その後は下げを縮めたが、週間では0.5%安と、3週連続のマイナスで終えた。
円はドルに対して3日ぶりに反発。米国とイランの和平合意への期待からドルが売られ、円は一時、対ドルで約1%高の157円59銭まで買われる場面があった。週間では3週連続で上昇した。

イラン戦争開始当初は、原油価格の高騰や安全資産への逃避買い需要からドルは値上がりした。だが、その後、停戦合意の発表や米国とイランの双方が和平協議に前向きな姿勢を示したことを受け、ドルから他の通貨に資金を振り向ける動きが広がりつつある。
TDセキュリティーズの為替戦略責任者ジャヤティ・バラドワジ氏は「安全資産としての需要はすでに弱まり始めている」とし、「そのためドルは下落している」と話した。
ここ数週間には、第2次トランプ政権下における為替市場の不安定さが改めて浮き彫りとなった。二転三転する関税・外交政策がセンチメントの急速な変動を招いていることが背景にある。
バンク・オブ・アメリカの為替ストラテジスト、アレックス・コーエン氏は「停戦を巡る不安定さは依然として残っており、当面はニュースに左右される展開となるだろう」と述べた。一方、「原油価格の上昇がどの程度インフレに波及するかが重要な注目点だ」と指摘した。
戦争が収束に向かう中、米国の財政赤字や労働市場に対する懸念を背景に、長期的なドル安要因を指摘する声も上がっている。世界的な金融政策の見通しもドルの先行きの重しとなっている。
原油
原油先物相場は急落。イランのアラグチ外相がホルムズ海峡について「完全に開放されている」と述べたことを受けて、米国とイランの紛争が終結に向かい、世界のエネルギー市場の混乱が緩和されるとの楽観が広がった。
アラグチ氏はX(旧ツイッター)への投稿で「レバノンの停戦に合わせ、停戦の残りの期間はあらゆる商船のホルムズ海峡通航を完全に開放すると宣言する」とした。
これより先、トランプ米大統領は、イランによる譲歩が戦争終結に向けた合意に道を開くと主張していた。中東での戦争はペルシャ湾からの原油供給を阻害し続けている。

A/Sグローバル・リスク・マネジメントのチーフアナリスト、アルネ・ローマン・ラスムセン氏は「市場は現在、戦争および海峡閉鎖の終結を織り込みつつある」と指摘。「もっとも、対象はイラン沿岸を航行する船舶に限られている点にわれわれは留意している。全面的な開放ではない可能性もある」と述べた。
アラグチ氏の投稿後、トランプ氏はイラン側の動きを歓迎。ただ、米海軍によるホルムズ海峡封鎖は「イランとの取引が100%完了するまで」継続するとくぎを刺した。これを受けて、原油相場は下げ幅をやや縮小した。
ラピダン・エナジー・グループの最高経営責任者(CEO)で元米中央情報局(CIA)職員のスコット・モデル氏は、「今後数週間で合意に至ったとしても、ホルムズ海峡を通じた輸送が完全に再開されるのは6月、あるいは7月になる」と指摘。
「その行方は、イランの核開発計画を巡る主要な対立点で米国とイランが折り合えるかどうかに左右される。高濃縮ウランの扱い、イランによるウラン濃縮凍結の期間、最終的なホルムズ海峡の取り扱いなどだ」と続けた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は、前日比10.84ドル(11.5%)安の1バレル=83.85ドルで取引を終了。北海ブレント先物6月限は9.01ドル(9.1%)安の90.38ドルで引けた。
金
金スポット相場は反発し、約1か月ぶりの高値となった。イランがホルムズ海峡は商船に「完全に開放」されたと発表したことに反応した。銀は4.2%上昇した。
発表を受けてドルと米国債利回りが低下する中、金は一時2.1%高となった。ドル安と金利低下は、ドル建てで利息を生まない金にとっては追い風となる。

金はここ数日、停戦への期待が高まる中で最近の下げを一部取り戻してきたが、2月下旬にイラン戦争が始まって以降では、なお約8%下落している。戦闘初期の流動性ひっ迫により、投資家が他の資産での損失を補うため、金を売却したことが背景にある。
MKS PAMPの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は「戦争開始以降、金は原油やドルとは逆方向に動き、リスク資産とは相関関係にあった。そのため、和平に関するニュースは上昇の勢いをもたらす」と述べた。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時50分現在、前日比69.80ドル(1.5%)高の1オンス=4859.86ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、同71.30ドル(1.5%)高の4879.60ドルで引けた。
原題:Wall Street Extends April Surge on Peace Prospects: Markets Wrap(抜粋)
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