- アラブ首長国連邦、5月1日付のOPEC脱退を表明
- 他の産油国が追随する可能性、新たな価格競争に

原油市場で最も危険な言葉は「石油輸出国機構(OPEC)は死んだ」だ。その「死亡記事」はこれまで何度も書かれてきたが、いずれも杞憂に終わった。しかし、28日に発表されたアラブ首長国連邦(UAE)のOPEC離脱は、過去の加盟国脱退と比べて規模の面でより重大であり、OPECにとって存亡の危機となるものだ。
過去10年間、OPECでは加盟国の離脱が相次いだ。2016年のインドネシア、2019年のカタール、2020年のエクアドル、2023年のアンゴラと続き、OPEC終焉論が何度も浮上した。どれも現実とはならなかったが、UAEとなれば話は別だ。
同国は大幅な増産を目指す意欲を持ち、それを支える豊富な資源に恵まれている。さらに重要なのは、その構想を現実に移すだけの資金力も備えている点だ。

今回の決定は、他の産油国が追随する道を開く。次に動く可能性が高いのはベネズエラだろう。ロドリゲス暫定大統領は引き続きOPECへの関与を維持する姿勢だが、次の選挙で政権を握る可能性が高い同国の野党とOPECの関係は、歴史的に対立的だ。さらにOPECプラスというより広い枠組みを見渡すと、複数の加盟国、特にカザフスタンが、すでに同枠組みから半ば距離を置いているのは明らかだ。
UAEの発表はイラン戦争のさなかというタイミングで行われたため、軍事衝突と結び付けて受け止められる可能性もある。確かに、UAEはイランの攻撃やホルムズ海峡の閉鎖、さらにクウェートやオマーンといった近隣諸国の曖昧な対応に衝撃を受けている。しかし、OPEC離脱の動きはイランとはほとんど関係がない。離脱への道筋はサウジアラビアで始まり、米シェール原油の産地テキサス州を経由してきた。
米国でシェール革命を背景に原油と天然ガスの生産が急増する中、UAEとサウジはOPECの方針を巡り、ほぼ10年にわたり冷戦状態を続けてきた。UAEは価格下落のリスクがあっても増産を望んでいたのに対し、ロシアと連携するサウジは、たとえ減産して供給余力を残すことになっても、原油価格を1バレル=100ドル前後に維持することを重視していた。
この対立の大半はこれまで表面化してこなかったが、UAEの増産志向は2021年7月のOPECプラス会合でサウジと衝突したことで明るみに出て、会合は中断を余儀なくされた。その後、会合は数日間再開されず、UAEがサウジからの強い圧力の下で譲歩するまで、協議の中断状態が続いた。
UAEにとって屈辱的な経験であり、いまも忘れていないはずだ。現在、同国は戦争を外交上の隠れみのとして利用している面もある。しかし、OPEC離脱の目的は原油増産にあり、それはサウジの意向に反する動きだ。
UAEはエネルギー市場を動揺させないよう配慮し、「需要や市場環境に応じて生産を段階的かつ慎重に増やすなど、責任ある行動を取る」と表明した。しかし、同国が増産に向かうのは明らかだ。
イラン戦争開始前の時点で、UAEはすでにOPECの生産枠を大きく上回る日量約370万バレルの原油を生産していた。生産能力はおそらく日量450万バレル近くに達しており、2027年末までに500万バレルの供給を可能にすることを目指している。2030年に向けて、さらに野心的な目標が近く打ち出されても不思議ではない。
仮に今年後半にホルムズ海峡が再開されれば、市場はUAEの増産分を必要とすることになる。世界経済は備蓄の原油を取り崩しており、国家備蓄と民間在庫の双方が消費されている。紛争終結後には、OPECの制約から解放されたUAEは必要に応じて生産を拡大できるようになる。そうして在庫の積み増しに必要な原油を供給し、結果として価格の上昇を抑えることになる。
現在、世界の原油市場は深刻な供給不足に直面している。だが数週間後、あるいは数カ月後には一転して供給過剰に転じる可能性がある。
ホルムズ海峡の再開に加え、新たな価格競争が同時に起きるかもしれない。前回の価格競争は2020年にサウジとロシアの間で繰り広げられた。次は地域内の争いとなり、サウジとUAEが対立する構図になる可能性がある。
(ハビアー・ブラス氏はエネルギー・コモディティーを担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、「ザ・ワールド・フォー・セール 世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡」の共同執筆者です。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:OPEC Faces an Existential Crisis After UAE Exit: Javier Blas(抜粋)