- 輸出急減で在庫積み上がり、貯蔵余力が逼迫
- 満杯前に減産先行、原油高で米にコスト圧力

Anthony Di Paola、Ben Bartenstein、Patrick Sykes、Weilun Soon、Charles Gorrivan
米国によるホルムズ海峡での海上封鎖がイランの石油取引を圧迫する中、輸出はここ数週間で急減し、在庫は急速に積み上がっている。イラン政府高官によると、同国は既に生産抑制に着手した。
ただし、イランはこうした事態への備えを数十年にわたって進めてきたというのが見落とせない点で、米国はこれを過小評価している可能性がある。
中東での戦争は膠着(こうちゃく)状態に入り、双方が相手の出方をうかがっている。トランプ米大統領はイランの最も重要な収入源である石油を標的とすることで、地政学と世界のエネルギー市場を一変させた同戦争の終結を迫ろうとしている。

もっとも、イランはこれまでのところ封鎖に対して一定の耐性を示している。長年培ってきた手法を活用して膠着状態の長期化を図り、原油価格を押し上げることで米国にコスト増を強いている。原油価格は今週、約4年ぶりの高値に達した。
イランは貯蔵能力の限界に先手を打つため、タンクが満杯になるのを待たず、原油生産を先行して削減している。前出のイラン政府高官が匿名を条件に話した。また当局者らによれば、長年の制裁や操業停止を通じて石油産業が混乱を繰り返してきた中で、技術者らは油井を損傷させることなく休止し、迅速に再稼働させる手法を身につけた。

「われわれには十分な専門知識と経験がある」とイラン石油・ガス・石油化学製品輸出業者協会の広報担当者、ハミド・ホセイニ氏は指摘。「懸念はしていない」と述べた。
こうした手法は、数々の戦争や制裁体制下で培われてきた。とりわけ第1次トランプ政権期に磨かれた。米国は2018年にイラン核合意から離脱し、イランに生産削減を強いる制裁を科したが、長期的に見れば、こうした制約は致命的打撃とはならず、その後数年間に同国の生産は持ち直した。

当時と現在とでは重要な違いもある。西側の制裁下で、イランはこれまで自国の大規模なタンカー船団や、国際的な監視の枠外で運航する無名企業所有の船舶ネットワーク、いわゆる「影の船団(シャドーフリート)」を活用し、中国に原油を密かに販売してきた。
しかし現在は、米国がホルムズ海峡周辺の海域を物理的に封鎖しているため、こうした手法はもはや通用しない。結果として、数千万バレル規模の原油が海上で足止めとなっている。
イラン当局者らも、原油の生産維持に向けた取り組みは一定期間しか続けられないことを認めている。原油高の影響など米国側の経済的な痛みに対し、自国がどこまで持ちこたえられるかが焦点となる。
存在感維持
イランは過去、市場での存在感を維持することに長けていた。買い手との関係維持に努め、制裁で顧客が応答できない状況でも、祝日の挨拶を送るなど一方的な連絡を続けることもあった。
オブシディアン・リスク・アドバイザーズのマネジングプリンシパル、ブレット・エリクソン氏は「米国側は、イランが何もせず圧力を受け入れ、予測可能な時間軸で崩壊に向かうとする従来通りの前提で動いている」と指摘する。「持続的な経済戦争下で政権がどのように振る舞うかを根本的に誤解している。体制は崩れず、適応する」と語った。
もっとも、生産削減にはリスクも伴う。油層は安定した圧力に依存しており、不適切な操業停止は長期的な損傷を引き起こす可能性がある。ホワイトハウスはこうした結果を期待しているとみられる。イラン経済は既に混乱状態にある。同国通貨は今週、対ドルで過去最安値を更新。鉄鋼やプラスチックなどの産業が戦時被害を受けたことで、消費者物価は上昇している。このため政府は国内供給の確保を優先し、重要な収入源である非石油輸出の一部抑制を余儀なくされている。
しかしイラン当局者らは、少なくとも当面はこうした混乱に対処可能だとの見方を示している。同国指導部は長年、従来型の成長を追求するのではなく、米国の圧力に耐えつつ影響を和らげる「抵抗経済(レジスタンス経済)」を重視してきた。
前出の高官は、同国が既に原油生産の抑制に着手したとしつつ、これまでにどの程度削減したかは明らかにしていない。この措置は油層の最大30%に影響する可能性があるが、過去の制裁で得た技術的・運用上の知見を活用すればリスクは管理可能だとしている。
「どの油井で実施すれば損傷を招かず、迅速に再開できるかは分かっている」とイラン石油・ガス・石油化学製品輸出業者協会のホセイニ氏は話した。同氏は今週、生産が削減されているとの見方を否定していた。
イラン国営石油会社は、複数回のコメント要請に応じていない。
この戦略がどの程度持続するかについて明確な見方はない。イランが「タンク満杯」の状態、すなわち貯蔵能力が尽きて油井の操業停止を余儀なくされる時点まで、どれほど持ちこたえられるかは不透明だ。
原題:Iran Juggles Oil Cuts and Storage Strain to Resist US Blockade(抜粋)