
[11日 ロイター] – 米南部の複数の共和党主導の州が、11月の議会中間選挙を前に連邦下院の選挙区割りの再画定を急いでいる。現在の下院における僅差の多数派を維持することが目的で、1年にわたる区割りを巡る全国的な争いの最新局面だ。
この戦いは昨年夏、トランプ大統領が南部テキサス州の共和党員に対し、民主党が保持する5議席を標的とした新しい区割りを導入するよう促したことから始まった。これに対し西部カリフォルニア州の民主党も共和党現職の5議席を狙った独自の区割りで応戦し、他の州もすぐに追随した。
今春時点では、両党の争いはほぼ互角だった。しかし、黒人多数派選挙区の保護を骨抜きにした連邦最高裁の判決と、南部バージニア州での民主党支持の区割りを覆した州最高裁の判決という2つの司法判断によって、共和党が決定的な優位に立った。
一連の闘いが終わろうとしている今、共和党は全国で十数の下院議席で優位性を高めたもようだ。民主党が多数派を奪還するには24年の結果から共和党の議席を3つ獲得するだけでよいため、全ての選挙区が極めて重要になる可能性がある。各州の状況は以下の通り。
◎共和党による議席獲得の試み
<テネシー州-1議席>
南部テネシー州の共和党議員団は7日、メンフィスを中心とする黒人多数派選挙区を解体する新しい選挙区割りを承認した。同州は、区割りにおける人種への考慮に制限を設けた連邦最高裁の判決を最初に利用した州となった。この動きにより、同州唯一の民主党連邦下院議員であるスティーブ・コーエン氏が落選する公算が大きく、共和党が州内全9選挙区を独占しそうだ。
<サウスカロライナ州-恐らく1議席>
共和党議員団は、ベテランの民主党連邦下院議員ジム・クライバーン氏の選挙区を標的とした新しい区割りを検討しているが、承認に十分な支持があるかは不透明。新しい区割りが導入される場合、州議会は6月の予備選挙を延期する必要が生じる可能性が高い。共和党は現在、同州の他の6つの下院議席を保持している。
<アラバマ州-恐らく1議席>
連邦最高裁は10日、共和党議員団が、南部アラバマ州で民主党が保持する2つの黒人多数派選挙区のうちの1つを標的とした新しい区割りを導入する道を開いた。最高裁の命令を見越して、共和党議員団はすでに19日に予定されていた下院予備選挙を中止し、新しい日程を設定することを許可する法案を承認していた。 同州の現在の区割りは、30年まで維持することを求める裁判所命令の対象となっていた。しかし、連邦最高裁は変更差し止め命令の解除という共和党の要請を認め、これにより議員団は民主党寄りの選挙区が1つしかない旧区割りに戻ることが可能になるかもしれない。共和党は既に同州の他の5議席を掌握している。
<テキサス州-最大5議席>
連邦最高裁は昨年12月初旬、民主党が保持する5議席を標的とした共和党支持の新しい区割りに道を開いた。共和党のアボット州知事が署名して8月に成立したこの区割りは、下級審で少数派の有権者を差別している可能性が高いとされたが、最高裁がこの判断を覆して有効と認めた。共和党は21年に作成された区割りの下で既に州の38議席中25議席を保持している。
<フロリダ州-最大4議席>
共和党のデサンティス知事は、民主党が保持する4議席を共和党に転換させることを目的とした新しい区割りを作成し、4月下旬に州議会の特別会期を招集。共和党が多数を占める議会がこれを可決し成立させた。一方民主党は、党派的な利益のために議会が選挙区を画定することを明示的に禁じている州憲法の規定を引用し、この区割りについて法廷で争うことを誓っている。共和党は既に州の28議席中20議席を保持している。
<ミズーリ州-1議席>
共和党のキーホー知事が昨年9月、カンザスシティーを拠点とする民主党の議席を解体する新しい区割りに署名した結果、共和党は州の8議席中7議席で優位を得ている。反対派はこの区割りに対する住民投票を強行しようとしており、複数の団体がその合法性を争う訴訟を提起している。
<オハイオ州-最大2議席>
州法の特異な規定により、以前の区割りが民主党の賛成なしで承認されたため、今年に向けて新しい区割りが必要となった。共和党員5人と民主党員2人で構成される州の区割り策定委員会は、昨年10月に妥協案を全会一致で承認。これにより共和党が民主党の2議席を奪取する可能性が高まったが、民主党が恐れていたほど極端な内容にはならなかった。共和党は州の15議席中10議席を保持している。
<ノースカロライナ州-1議席>
州議会の共和党多数派は昨年10月、民主党の議席を共和党に転換させるように設計された新しい区割りを承認した。これにより、両党が拮抗する「激戦州」であるにもかかわらず、共和党が州の14議席中11議席を掌握しそうだ。州法に基づき、民主党のスタイン知事はこのプロセスに関与できなかった。
<ルイジアナ州-最大2議席>
共和党のランドリー知事は、連邦最高裁がルイジアナ州の区割りは人種への配慮が過度で違法だと判断した後、6日の下院予備選挙を停止した。この延期により、共和党が多数を占める州議会は、民主党が保持する2つの黒人多数派選挙区を両方とも解体する案を含む、複数の新しい区割り案を検討する機会を得る。共和党は現在、州の6議席中4議席を保持している。
<インディアナ州-試みは失敗>
中西部インディアナ州の共和党が支配する上院は、同州唯一の2つの民主党下院議席を共和党に転換させることを目的とした新しい区割りを否決した。与党がトランプ氏の意向に造反した異例の事態と言える。共和党は州の9議席中7議席を保持している。
<カンザス州- 試みは失敗>
中西部カンザス州の共和党は、同党のダン・ホーキンス州下院議長が1月、民主党のケリー知事による拒否権行使を覆すだけの支持が議会内にないと述べた後、トランプ氏が後押ししていた選挙区割り見直しの試みを断念した。共和党は既に州の4議席中3議席を保持している。
◎民主党による議席獲得の試み
<カリフォルニア州-最大5議席>
ニューサム知事と民主党議員団は、テキサス州への直接的な対抗策として、最大5つの共和党議席を民主党に転換させるように設計された新しい区割り案を支持。有権者もこの区割り案を圧倒的多数で承認した。民主党は現在、州の52議席のうち43議席を保持している。
<バージニア州-裁判所により阻止>
南部バージニア州の有権者は4月21日、共和党の4議席を民主党に転換させる可能性のある、民主党が作成した新しい選挙区割りを特別選挙で承認した。しかし州最高裁は今月8日、提案された住民投票を可決し投票に付す際、民主党議員が適切な手続きに従わなかったと裁定し、その結果を無効とした。
<ユタ州-1議席>
州裁判所の判事は、共和党が作成した区割りを違法に党派的であるとして却下し、同州の4つの共和党議席のうち1つが民主党に転換する可能性が高い代替案を施行した。
<メリーランド州-試みは停滞>
州下院の民主党員は2月、同州唯一の共和党議員を標的とした新しい区割りを導入しようと動き始めた。民主党のムーア州知事や全米の民主党指導者らが支持した行動だ。民主党は州の他の7議席を保持している。しかし民主党のビル・ファーガソン州上院議長が反対に回ったため、この試みは失敗に終わる可能性が高い。
<ニューヨーク州-裁判所により阻止>
東部ニューヨーク州の判事は1月、州の独立区割り策定委員会に対し、ニューヨーク市のスタテン島を中心とする共和党保持の選挙区を再画定するよう命じた。これにより、民主党が11月に議席を奪取する機会を得る可能性があった。ただ保守派が多数派の連邦最高裁は3月2日、現職のニコル・マリオタキス議員(共和党)からの要請を認め、その決定を保留することを命じた。
民主党は州の26議席中19議席を保持している。民主党のホークル知事は、トランプ氏の動きに対抗して新しい区割りを追求することを誓っているが、州の法律では来年まで州全域の区割り変更を進めることは不可能となっている。