- イランとの停戦は「生命維持装置に頼る状態」-トランプ氏
- S&P500種は最高値を更新、半導体株がけん引も構成銘柄の大半は下落

11日の米金融市場では、国債利回りが上昇した(価格は下落)。米国とイランが戦争終結の条件で合意に至らず、ホルムズ海峡の早期再開への期待が後退し、原油価格が上昇したことが背景にある。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は一時1バレル=99ドル台後半まで上昇した後、前週末の終値比3%近く上昇し、98ドルをやや上回った水準で取引を終えた。
エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の通航がほぼ停止している状態が継続し、エネルギー供給のさらなる混乱やインフレ急騰への懸念が再燃した。
米国債市場ではイラン戦争の影響で米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利下げ観測が後退する中、全ての年限で利回りが上昇した。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.98% | 4.9 | 0.99% |
| 米10年債利回り | 4.41% | 5.5 | 1.27% |
| 米2年債利回り | 3.95% | 6.5 | 1.67% |
| 米東部時間 | 16時48分 |
同日に実施された3年債入札の需要指標が弱く、今後2日間に予定される10年債と30年債の入札を前に売り圧力が強まった。社債の新規発行が相次いだことも重しとなった。
2年債利回りは7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く上昇し、3.95%を付けた。10年債利回りは6bp近く上げ、4.41%。
株式
米株式相場は続伸。半導体株の上昇がS&P500種株価指数を再び終値ベースの最高値に押し上げたが、指数構成銘柄の半数余りは下落した。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 7412.84 | 13.91 | 0.19% |
| ダウ工業株30種平均 | 49704.47 | 95.31 | 0.19% |
| ナスダック総合指数 | 26274.13 | 27.05 | 0.10% |
米国とイランの停戦は11日、極めて不安定な局面を迎えた。トランプ米大統領が米国とイランの停戦が「大きな生命維持装置に頼る状態」にあると述べた。記者団に対し、自身の提案に対するイラン側からの回答を「ごみ同然」と表現し、「最後まで読みさえしなかった」とも語った。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は、米国とイランは「合意はなお見通せず、リスクは高止まりしている」と指摘した。「両国とも合意成立に向けた圧力にさらされている」という。
今後発表される一連の指標が、インフレに対する米国民の不満の高まりを裏付ける可能性が高い。ブルームバーグの調査によるエコノミスト予想の中央値では、4月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.6%上昇すると見込まれている。3月は2022年以来で最大の月次上昇だった。
モルガン・スタンレーのマシュー・ホーンバック氏は、CPIについて「やや強めの内容になる」との見方をブルームバーグテレビジョンで示した。CPIデータはFRBが重視するインフレ指標に反映される。
ウォール街では、利下げ時期見通しの後ずれを見込む金融機関が増えている。ゴールドマン・サックス・グループとバンク・オブ・アメリカもそうした動きに加わった。インフレと雇用の両指標を踏まえると、FRBは少なくとも年末まで政策金利を据え置くことが正当化されるとの見方を示している。
外為
外国為替市場でドル指数は反発。原油価格の上昇を手掛かりに買いが優勢となった。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1189.17 | 1.19 | 0.10% |
| ドル/円 | ¥157.21 | ¥0.53 | 0.34% |
| ユーロ/ドル | $1.1782 | -$0.0005 | -0.04% |
| 米東部時間 | 16時47分 |
原油高を背景に、資源国通貨であるノルウェー・クローネは主要10通貨(G10)で最も堅調な動きとなった。一方、スイス・フランや円などの安全資産とされる通貨は下落が目立った。
円は対ドルで下落し、1ドル=157円台前半で取引された。取引終盤に下げを拡大する場面があった。
ユーロはニューヨーク時間帯に対ドルで下げ渋った。ブルームバーグの調査によると、イラン戦争がインフレを押し上げる中、エコノミストらは欧州中央銀行(ECB)が年内に2回の利上げを実施するとみている。
シティグループのダニエル・トボン氏らアナリストはリポートで「全体としてはユーロ安・ドル高を見込みやすい地合いだ」と指摘した。
原油
原油先物相場は上昇。トランプ氏がイランとの停戦が維持されるか極めて危うい状況にあるとの認識を示し、米イランの和平協議の行き詰まりとホルムズ海峡の封鎖長期化が意識された。
ニュースサイトのアクシオスによると、トランプ氏はこの日、国家安全保障チームと会合を開き、イラン戦争の次の一手を協議する見通しで、これには軍事行動の再開も含まれる可能性がある。
トランプ氏はまた、ペルシャ湾で足止めに遭っている中立国の船舶を対象にホルムズ海峡通過を支援する「プロジェクト・フリーダム」の再開を検討しているとFOXニュースに語った。これも原油の押し上げ要因となった。
同作戦の再開検討は、イランが近く海峡を開放する可能性は低いと米国側がみているためだと市場では受け止められた。
トランプ氏は停戦が「大きな生命維持装置につながれている」と語り、危機的な状況にあるとの認識を記者団に示した。
またガソリン価格の高騰に対応するため、連邦ガソリン税の一時停止を支持する考えを示した。実現すれば、全米レベルでは初の措置となる。
一方、イランが同海峡に対する支配を緩める兆しは見えない。国営メディアは、イランが対艦巡航ミサイル発射能力を備えた深海航行型潜水艦を同海峡に配備したと報じた。10日にはカタール沖で無人機攻撃により貨物船が一時炎上しており、航行の危険性が依然として高いことが改めて浮き彫りとなっていた。
スタンダードチャータードのエネルギー調査責任者、エミリー・アシュフォード氏は「外交ルートで何らかの前向きな成果が得られるとの期待があった」とブルームバーグテレビジョンで発言。「しかし、依然として膠着(こうちゃく)状態から抜け出せておらず、時間が経過するごとに失われる供給量は増える」と話した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限は、前営業日比2.65ドル(2.8%)高の1バレル=98.07ドルで終了。北海ブレント先物7月限は2.92ドル(2.9%)上昇して104.21ドルで終了した。

金
金スポット価格は売り買いが交錯。米国・イランの和平協議およびホルムズ海峡再開に向けた進展が見られず、市場関係者は中東情勢による相場への影響を改めて見極めようとしている。
午前の取引では売りが先行していたが、切り返して一時は0.7%高の1オンス=4748.61ドルまで買われた。ドルが上げ幅を縮小し、ドル建てで取引される金の割高感が薄れた。
フィリップ・ノバのアナリスト、プリヤンカ・サクデバ氏は、イランの回答をトランプ氏が拒否したことは、優先事項がイランの核開発抑制にあることを示していると指摘。その結果、「中東でのさらなる緊張激化か、良くても協議の停滞が続く可能性が高い」とリポートで指摘した。
また「地政学的な不安とインフレ加速への懸念が綱引きしており、金相場は横ばい圏での値固めが続いている」とし、これらの材料により「世界市場でボラティリティーが高い状況が続く中でも、方向感を欠く展開が続く公算が大きい」と述べた。
一方、インドのモディ首相は10日、少なくとも1年間は金の購入を控えるよう国民に呼びかけた。燃料輸入のコスト増加に備え、外貨準備を温存する狙いがある。インドは世界2位の金輸入国で、同国の輸入額に占める金の割合は原油に次いで大きい。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時54分現在、前営業日比10.89ドル高の1オンス=4726.15ドル。一方、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は2.00ドル(0.1%未満)安の4728.70ドルで取引を終えた。

欧州
11日の欧州債券市場は、英国債が急落した。先週の地方選挙で与党・労働党が惨敗したことを受け、スターマー首相の退任を求める声が挙がっている。戦争終結を巡る米国とイランの対立がこう着状態にあることから、欧州の他の債券も下落した。
英30年債の利回りは、一時11ベーシスポイント(bp=1bp=0.01%)上昇し5.69%となった。長期債利回りは政治・財政リスクに敏感で、労働党員らがスターマー氏の退陣に向けた日程を求めたことで、短期債よりも大きく影響を受けた。
投資家は次期党首により労働党が左傾化し、支出拡大のために国債を増発する可能性を懸念している。英2年債利回りは8bp高の4.46%だった。
ドイツの2年債利回りは5bp上昇し2.65%となった。ドイツ債利回りは3日連続で上昇した。短期債の利回りの上昇幅が長期債を上回り、イールドカーブはベア・フラット化している。
短期金融市場は、欧州中央銀行(ECB)が6月利上げする確率を約90%と織り込んでいる。予想は先週末からわずかに拡大した。ブルームバーグの調査によると、イラン情勢によるインフレ加速を受け、ECBは今年2回の利上げを行うとみられている。
欧州株は方向感に乏しい動きとなった。
ストックス欧州600指数は、ほぼ横ばいで取引を終えた。銅など金属価格の上昇を背景に鉱業株は2.6%上昇し、過去最高値を更新した。通信株も好調で、英エアテル・アフリカは、主要株主のバーティ・エアテルが持ち分引き上げの可能性を示唆したことを受け、14%高となり、過去最高値を更新した。
一方、高級品株は、米イラン交渉の停滞が成長への懸念につながり、大きく下落した。ゴールドマン・サックスの欧州高級品株バスケットは3.5%下落した。
5月11日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
| 株 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ストックス欧州株600 | 612.79 | +0.65 | +0.11% |
| 英FT100 | 10,269.43 | +36.36 | +0.36% |
| 独DAX | 24,350.28 | +11.65 | +0.05% |
| 仏CAC40 | 8,056.38 | -56.19 | -0.69% |
| 債券 | 直近利回り | 前営業日比 |
|---|---|---|
| 独国債2年物 | 2.65% | +0.05 |
| 独国債10年物 | 3.04% | +0.04 |
| 英国債10年物 | 5.00% | +0.09 |
原題:Oil Climbs as US-Iran Deadlock Lifts Bond Yields: Markets Wrap(抜粋)
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