米国のAI開発スタートアップ、アンソロピック(Anthropic)が、少なくとも300億ドル(約4兆7,000億円)規模の新たな資金調達に向けて投資家と協議中であると、Bloombergのナターシャ・マスカレニャス(Natasha Mascarenhas)記者、エドワード・ラドロウ(Edward Ludlow)記者らが報じている。

加速する「リスク・テイク」の論理

2021年設立の同社は「人類に利益をもたらし、安全なAIの開発」を掲げる新興企業だ。驚くべきはそのスピード感である。今年2月時点での評価額は約184億ドル(約2.9兆円)程度とされていたが、今回の報道によれば、同社は企業価値を9,000億ドル(約142兆円)超と見定めた上で、過去最大級の調達に挑んでいるという。

AIブームに沸く米国では、リスクを恐れるよりも「リスクを取らなければ生き残れない」というハイリスク・ハイリターンの論理が支配的だ。これに対し、日本国内では「AIバブル崩壊」を懸念する声が根強い。投資家も含め、平然とリスクを飲み込む米国市場のダイナミズムは、まさに「リスク経済」の実態を体現している。

日本の岐路:高市政権と「日本成長戦略本部」の攻防

翻って日本国内では、高市総理の登板により、投資の必要性がようやく公の議論として認識され始めている。高市総理が創設した「日本成長戦略本部」では、投資拡大に向けた侃々諤々の議論が展開中だ。しかし、漏れ伝わる情報によれば、積極財政派が必ずしも主導権を握っているわけではない。中長期的な投資計画の策定や複数年度予算への移行を目指す動きに対し、財政健全化を優先する勢力の抵抗は依然として根強い。投資に付き物である「リスク」という言葉に、慎重派が足踏みしている格好だ。

統計が示す「投資格差」の実態

成長戦略事務局の資料によれば、主要国の研究開発投資額(2023年実績)は以下の通りである。研究開発投資額(実績)1位は米国で8,234億ドル、2位が中国の7,807億ドル、3位日本は1,939億ドル、4位ドイツは1,602億ドル、5位韓国が1,341億ドルと続く。米国の圧倒的な投資額の背後には、政府による莫大な基礎的投資が存在する。国家主導の中国に対し、日本は投資の大部分を民間企業に委ねてきた。その結果、政府の誘導不足から「Too little, too late(少なすぎて遅すぎる)」という事態を招いてきた。

結果は骨太方針に反映

今回の成長戦略はこの構造を打破し、官民一体で投資を拡大できるかが焦点となる。現在、水面下で行われている積極財政派と財政健全派の激しい議論において、過去の慣例に縛られない決断が下されるか。そこが日本経済再生の試金石となる。結果は、7月上旬に策定される「骨太の方針」で明らかになるだろう。