麻生太郎副総裁を筆頭に、自民党の主要議員が呼びかけ人に名を連ねた新グループ「国力研究会(Japan is Back=JiB)」の初会合が昨日(21日)開かれた。
同研究会に入会届を提出した議員は実に347人にのぼり、当日の出席者だけでも約320人以上を記録した。自民党所属の国会議員(衆参合わせて417人)の8割超が名を連ねたことになり、党内をほぼ丸ごと飲み込む異例の巨大研究会が誕生した形だ。
錯綜する評価:「国力増強」か「令和の大政翼賛会」か
この巨大グループの始動には、早くもさまざまな評価や思惑が入り乱れている。
好意的な見方としては、「高市政権の支持基盤を強化し、国力増強に向けて与党の意思統一を図るための強力なエンジンになる」という評価がある。その一方で、冷ややかな視線も少なくない。来秋に予定される総裁選の前哨戦、ポスト(役職)欲しさの「忖度研究会」、あるいは多様な議論を封殺しかねない「令和の大政翼賛会」といった痛烈な批判の声も党内から上がっている。
日本が現在直面している状況は、国際政治の激変にいかに対応するかという、国家の存立基盤そのものが問われる局面だ。大げさに言えば、明治維新直後の政府が、薩摩や長州といった藩閥意識を抱えながらも、一歩一歩「富国強兵」を目指した当時に似ている。皇室典範のあり方、憲法改正、軍事力の強化といった議論はその象徴と言えるだろう。
「国力研究会」というネーミング通り、この会は「失われた30年」を経て衰退した日本の経済力、外交力、防衛力を再構築することを目指しているとされる。しかし、それが単なる形式的な権力争いの道具に過ぎないのか、あるいは未来を先取りする政策の大転換を目指すものなのか、現時点では判然としない。
「反主流派」の炙り出しと、すれ違う思惑
今回の会合で驚かされたのは、参加者の数が事前の予想を大幅に超えたことだ。その一方で、参加しなかった顔ぶれは事前の下馬評通りであった。
主な不参加者は、岸田文雄氏、石破茂氏の両首相経験者をはじめ、林芳正総務大臣、岩屋毅前外務大臣、村上誠一郎前総務大臣など、現在の「反主流派」に属する面々が並ぶ。これだけを見れば、同会の最高顧問に就任した麻生氏が、党内の反主流派を炙り出すために仕掛けた「踏み絵」であるという見方も説得力を持つ。
しかし、一筋縄ではいかないのが自民党の政治である。同日、自民党の日本成長戦略本部で会長を務める岸田前首相は、高市首相が持論とする「予算の複数年度化」などを盛り込んだ提言案の全容をまとめている。こうした動きを鑑みると、いわゆる反主流派のすべてが必ずしも「反高市」というわけではないようだ。
「量」から「質」への転換が問われる
自民党はもともと、融通無碍(むげ)な政党だ。野党の独自政策すら平気で飲み込み、権力を維持するためであれば、掲げた政策など二の次、三の次にすることもある。高市首相の応援団を自称するこの研究会も、一皮むけば、掲げている「責任ある積極財政」の看板をいつでも捨て去る割り切りを持ち合わせているかもしれない。
いくら8割を超える議員を集めたとはいえ、旧来の主流派が頑なに唱えてきた「財政健全化主義」が、一夜にして「積極財政主義」に転換するとは考えにくい。現に、目玉政策の一つである「給付付き税額控除」などの議論も、党内調整が進むにつれて骨抜きにされそうな雰囲気が漂い始めている。
積極財政による投資の拡大、予算の複数年度化、同志国との防衛協力の拡大――。高市政権が進めようとしているこれら「現状の大転換」を通した日本再生が実現するかどうかは、結局のところ、議員の数という「量」ではなく、政策の中身という「質」にかかっている。巨大研究会の発足は、質より量を優先した結果の同調圧力の産物だったのではないか、という懸念は拭えない。
旧態依然とした同調圧力だけでは、もはやこの国は持たない。8割を超えた入会議員たちに今本当に求められているのは、数あわせの政治ではなく、真の日本再生(Japan is Back)に向けた、政策の深い議論と実行力である。