「骨太の方針2026(原案)」に目を通してみた。精読したわけではないため断言はできないが、全体として「責任ある積極財政」派の主張がほぼ全面的に盛り込まれているという印象を受けた。
骨太の方針を策定する経済財政諮問会議の事務局は財務省である。同省は健全財政派の巣窟であり、減税よりも増税に軸足を置く「官庁の中の官庁」だ。高市政権誕生以降、陰に陽に積極財政派の動きにブレーキをかけてきた組織である。その財務省が事務局を務める以上、「責任ある積極財政」の主張がすんなりと通るとは思えなかった。
ところが、原案は積極財政派主導の内容となっている。積極財政の必要性を一貫して主張してきた筆者から見ても「意外感」がある。なぜだろうか。想像するに、積極財政派の面々は原案作成に関わっていないのではないか。あるいは、事務局内の力関係が完全に積極財政派に握られたということなのか。
天下の財務省が、健全財政路線を諦めることはあり得ない。経済財政諮問会議の本番で内容を覆すことを狙っているのだろうか。同会議のメンバーは健全派が圧倒的多数を占めている。原案がこのまま通るとは思えない。何らかの仕掛けが隠されているような気がしてならない。
下衆の勘ぐりかもしれない。推測はやめて、中身を詳しく見てみよう。第1章「強い経済の実現に向けて」は、次のような書き出しで始まっている。「日本と日本人の底力を活かし、総合的な国力を徹底的に強くしていく。これが高市内閣の使命である。その中核にあるのが『強い経済』の実現であり、従来の延長線上ではない、新たな経済財政運営への抜本的な転換を図る」。その通りだ。
また、「我が国の潜在成長率は、長年にわたる『未来への投資不足』により、主要先進国と比べて低迷している。その低迷は、単なる生産能力の不足にとどまらず、科学技術力、産業競争力、人材力といった成長の質的基盤の弱体化を伴っている。長年のデフレにより、企業や家計には固定的な物価・賃金観が定着し、国内投資やイノベーションが抑制されてきた」と記されている。
そして、以下のように結論づけている。「『強い経済』の構築と『財政の持続可能性』をバランスよく同時に実現することにより、今を生きている国民と未来を生きる国民への責任を果たしていく」。これが積極財政派の“肝”だろう。財政健全派は「今を生きる国民」を犠牲にして、「未来を生きる国民」の負担回避を主張してきた。その結果、何が起きたか。過剰な「投資不足」と「過剰貯蓄」が生まれたのである。
原案は最後に「令和9年度予算編成に向けた考え方」を示している。そこには「通常歳出とは別に『強く豊かな日本投資枠』を創設する」「シーリングを設けることなく、必要な額を適切に要求できるようにする」「補正予算に依存した財政運営からの脱却」「歳出規模の総額は、物価・賃金、名目経済規模、歳入見通し、政策効果、財政目標との整合性を踏まえ、経済の成長力強化と名目経済規模の拡大にふさわしいものとする」など、さまざまな施策が盛り込まれている。
原案を見る限り、骨太の方針は積極財政派の完勝に見える。だが、そのようなことがあり得るのだろうか。頭の片隅に居座っている“懸念”は解消されていない。ちょうど、「ドリル優子」こと小渕優子氏(小渕恵三元首相の次女であり、財務省からの信頼も厚いとされる人物)が、自民党税制調査会のインナーを辞任するというニュースが流れている。
小渕氏は健全財政派のシンボル的存在でもある。辞任が事実であれば、今回の原案とも何らかの関係があるのかもしれない。自民党内の健全財政派の動向を含め、両者の戦いはまだまだ続きそうな予感がする。