「責任ある積極財政」のパイロット役を果たす「骨太の方針2026」。その原案が発表されて2週間が経つ。この間、空転する国会の正常化が最大の焦点となっていたが、水面下では財政健全化を重視する勢力(財政健全派)を中心に、原案の修正に向けた動きが活発化していた。その結果だろうか、ロイターも原案修正の動きを報じている。

ロイターは「金融政策めぐる骨太文言、修正の可能性 政権方針は維持=関係筋」と題した記事を8日に配信した。一方、日本経済新聞(日経)や朝日新聞は、10年物国債の利回りが30年ぶりに2.9%に達したと大々的に報じている。両紙とも財政健全化路線を信奉しており、財務省の意向を色濃く反映する報道機関といえる。

健全財政の旗振り役とも言うべき財務省は表立って原案を批判できないため、両紙が「金利上昇は積極財政の結果である」と大々的な印象操作に努めているようだ。両紙に対しては、「失われた30年の低金利こそが異常であり、景気が良くなれば金利は上がる。長期債の利回り上昇は、正常化へ向けた一里塚である」と説明すれば済む話である。

骨太の方針原案に関する報道において、積極財政派と健全財政派の力関係を測る上では、ロイターが2日前に報じた「原案修正の可能性」という記事の方が、現状を明確に捉えている。記事によると、原案修正の理由は「一部の市場関係者から日銀の独立性を牽制(けんせい)すると解釈され、円安・金利上昇の要因となりかねないとの懸念が政府・与党内からも出たため」としている。日銀の独立性を考慮すれば、ある意味で当然の修正と言えるだろう。

ただ、「責任ある積極財政」そのものについては、複数の政府・与党関係者が「高市政権が進める政策の方針は変更しない」と明言している。骨太の方針はここ数年、財務省が主導して原案を作成し、経済財政諮問会議で最終決定されてきた。今回も同会議の事務局は財務省だが、原案は同省を外し、官邸主導で作成されたようだ。

経済財政諮問会議の議長は高市早苗首相である。原案作成の過程では、完全に財務省が排除されたように見える。たまらなくなった同省は、平素から手なずけてきた主要メディアを通じて積極財政批判を展開しているのだろう。「積極財政を推進すると長期金利が上昇し、住宅ローン金利も上がる」といった、いつもの「恫喝(どうかつ)」路線のシナリオだ。

朝日新聞や日経新聞は、財政健全化の観点から「国債の増発によって孫子の代に負担が増える」と印象操作に精を出している。だが現実問題として、国債には60年償還というルールがあるものの、大半の国債は償還されずに借換債に置き換わっている。孫子の代に実質的な負担はかかっていないのだ。それと同時に、プライマリーバランス(PB)に重きを置いた財政運営を推進してきた結果、上下水道をはじめ、将来の基盤となるべき社会インフラの老朽化を見過ごしてきた。

そのような例は数え上げれば切りがない。積極財政派はこれに対し、原案の中で「今を生きている国民と未来を生きる国民への責任を果たしていく」と明記している。「孫子の負担が増える」という根拠の薄い主張を繰り返す財政健全派に対し、積極財政派は「未来への責任」という大義を掲げる。「未来への責任」は、当然ながら「今を生きている国民」に対する責任を果たすことによって成り立つものだ。

財政健全派が多数を占める現状を考えると、骨太の方針原案をめぐる駆け引きにおいて、積極財政派はうまく立ち回っているように見える。今月中の閣議決定まで山場はいくつもあるだろうが、自民党内でも「責任ある積極財政」を支持する声は増えているようだ。ゴールまではあとわずか。このままいけば、日本も変わるだろう。