政府は、年内に改定する国家安全保障戦略で、抑止力強化のために能力を高める分野を「6本柱」に拡大する方向で調整に入った。防衛力、外交力といった現行戦略の5本柱に、「人材力」を加える。科学技術やAI(人工知能)、サイバーなど先端分野の人材確保・育成を進める姿勢を明確にする。
複数の政府関係者が明らかにした。2022年に改定された現行戦略では、「総合的な国力」を高めるために強化する分野として、防衛力、外交力、経済力、技術力、情報力を掲げた。今回の改定で、高市首相が「国力の源泉」と位置づける人材力を新たに明記する。米国や中国は、科学技術分野の高度な人材獲得を国家戦略として推進しており、日本も同様の方針を打ち出す必要があると判断した。

政府は、六つの力を有機的に連携させ、抑止力・対処力を強化する構想を描く。人材力は他の5本柱を支える土台でもある。
人材力で力点を置く対象は、重要性が高まるデュアルユース(軍民両用)技術やAI、サイバー、宇宙などだ。技術の急速な進展に対応できるよう、産官学の技術者や研究者、専門的な知見を持つ行政職員の確保・育成に注力する。防衛分野に関わってこなかった民間企業や研究機関、大学との連携強化にも取り組む。
防衛省にとどまらず、経済産業省や文部科学省などを含めた政府横断的な施策を進める体制も整える。
自衛隊でも専門人材の重要性は高まっている。防衛省は人口減少に伴うなり手不足の対策として、AIや無人機などを活用した省人化を進める方針だが、そのためには先端技術に精通した人材が欠かせない。情報や経済安全保障でも人材の確保は急務となっている。
首相は就任前の2024年に編著者として出版した『国力研究』(産経新聞出版)で、現行戦略の5本柱に触れて「これらの全てに関わる重要な要素が『人材力』だ」と唱えていた。3文書改定に向けた政府の有識者会議でも「人口・人材の確保は安保の根幹だ」として、第6の柱に位置づけるべきだとの意見が出ていた。