[ニューヨーク 23日 ロイター] – ニューヨーク外為市場では、貿易を巡る緊張の高まりで世界的な経済成長が阻害されるとの懸念から、ドルが主要通貨に対し約1カ月ぶりの低水準近辺で推移した。主要6通貨に対するドル指数は0.48%安の89.427。週初からは0.9%低下している。

トランプ米大統領は前日、知的財産権侵害を理由に中国製品に関税をかける案を発表。中国商務省はこれに対し、米中間の通商関係が「危険な状態」に達するのを回避するよう米国に訴えながらも、米国の一国主義や保護主義に断固として反対する姿勢を表明した。

マニュライフ・アセット・マネジメント(ボストン)のシニア投資アナリスト、チャック・トームズ氏は「さまざまなニュースが飛び交うなか警戒感が高まっており、次はどのようなニュースが出てくるのか、それに対し市場はどのように反応するのか探る動きが出ている」と指摘。「こうした不透明感のなか、慎重姿勢が高まっている」と述べた。

同氏はまた、世界的な中央銀行の政策のシフトも外国為替市場での不透明感の高まりにつながっているとも指摘。トランプ大統領が前日、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任し、後任に強硬派として知られるジョン・ボルトン氏を充てることを明らかにしたことも市場心理に影響しているとの見方を示した。

先物取引のFXTM(ロンドン)の調査アナリスト、ルクマン・オトゥヌガ氏は、「貿易戦争が世界的な経済成長にマイナスの影響を及ぼすとの懸念が高まるとみられるなか、この先はリスク選好度の低下が市場の主要なテーマとなる可能性がある」と指摘。安全通貨とみなされる円は対ドルで一時1年4カ月ぶりの高値に上昇。終盤の取引でドル/円は0.34%安の104.9円となっている。ドルは同じく安全通貨と見なされるスイスフランに対しては0.26%安となっている。

イングランド銀行(英中央銀行)は前日、政策金利を0.50%に据え置くことを決定しているが、英中銀金融政策委員会のブリハ委員はこの日、今後数年間はおそらく毎年1、2回の利上げが必要になるとの認識を表明。今後、次回の5月会合での利上げ観測が一段と強まるとみられている。こうしたなか英ポンドは0.36%上昇した。カナダドルも対米ドルで上昇。カナダでは原油高のほかインフレが上昇していることで、カナダ銀行(中央銀行)が向こう数カ月で利上げを実施するとの観測が高まっている。