[ワシントン/ベイルート 14日 ロイター] – 米英仏3カ国によるシリア攻撃を巡り、トランプ米大統領は作戦が成功したと表明した。ただ限定的な攻撃ではシリアのアサド政権は揺るがないとみられている。米英仏3カ国は14日、アサド政権が化学兵器を使用したとして関連施設を標的にミサイル105発で攻撃した。

米国防総省によると、標的となったのは化学兵器関連施設3拠点。ダマスカスのバルゼ地区にある研究開発センターと、ホムス近郊の軍事施設2カ所が含まれている。米英仏3カ国は攻撃について、シリアの化学兵器関連施設に限定したもので、アサド政権の転覆や内戦への介入を意図していないと説明。一方シリアのアサド政権とその同盟国は攻撃について、不法な侵略行為と非難した。

トランプ大統領はツイッターに「任務完了」と投稿。これは2003年の米国によるイラク侵攻の際に当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領が使用したフレーズと同じだ。米統合参謀本部のケネス・マッケンジー中将は国防総省で、「(特にバルゼ地区について)シリアの化学兵器プログラムの中枢を攻撃したと考えている」と説明。ただプログラムの完全破壊には至っていないことを認め、化学兵器攻撃を今後実施しないとは保証できないと述べた。

米国のヘイリー国連大使は国連安全保障理事会の緊急会合で、シリアが有毒ガスを再び使用すれば米国が行動する用意があるとのトランプ大統領の言葉を明らかにした。米政府高官は14日、今月7日にシリアのドゥーマで化学兵器が使われた可能性について、「入手した情報からみて塩素ガスを使用した可能性が高いが、サリンの使用を示す有力情報もある」と語った。

<アサド大統領は「耐久の朝」>

バルゼ地区のシリア科学研究センターでは、ミサイルが着弾してから10時間が経過してからも、破壊された建物5棟から煙が上がっていた。今のところ、負傷者が出ているとの情報はない。シリアは破壊された研究所を写した動画を公表する一方、アサド大統領がいつも通り仕事に向かう様子を写した動画も「耐久の朝」とのキャプション付きで公表した。

シリアと同盟国は今回の米英仏3カ国による攻撃は1度限りで、アサド政権に大きな打撃とはならないとみている。アサド政権を支持する関係筋はロイターに対し、ロシアからの警告を受けて、標的となった施設からは数日前に人員が退避していたと明らかにした。ロシアのラブロフ外相は、3カ国による攻撃は「受け入れられず、違法」だと指摘した。

シリアの国営メディアは攻撃を「言語道断の国際法違反」と非難。イランの最高指導者ハメネイ師は攻撃を犯罪と位置付けた上で、欧米3カ国の指導者は犯罪者だと指摘した。ロシアは同盟国へのいかなる攻撃にも対抗すると表明していたが、米国防総省によると、ロシアの防空システムは使用されていない。シリアは40発の無誘導式地対空ミサイルを発射したが、これは3カ国による攻撃が終了した後だという。マッケンジー中将は「われわれはミサイルがすべて標的に到達したことに自信を持っている」と述べた。

<米英仏首脳が結果を協議>

英国のメイ首相は今回の攻撃について「限定的で的を絞った」ものだとし、アサド政権打倒や内戦への介入拡大を意図していないと説明した。米英仏3カ国によると、トランプ大統領はメイ首相およびマクロン仏大統領と電話会談を行い、攻撃の結果について協議したという。グテレス国連事務総長はシリア情勢について、安保理の全メンバーに対して自制を呼びかけ、事態をエスカレートさせないよう求めた。ただ、化学兵器使用疑惑については調査が必要だとした。