北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は20日、平壌で開かれた朝鮮労働党中央委員会総会で核実験の中止と大陸弾道ミサイル(ICBM)の発射中止、核実験場の廃棄を決めた。年明け早々に始まった対話路線の継続と27日の南北首脳会談、5月末から6月初旬に予定されている米朝首脳会談に向けた国内の体制固めだろう。金委員長の繰り出すカードはこれにとどまらないだろう。米朝首脳会談まで次から次とあの手この手の融和策を打ち出してくると思う。それによって北朝鮮情勢が緩和に向かって大きく動き出すのだろうか。個人的には「そうはならない」と思う。一般的なメディアを通じて知り得る情報しかないが、ど素人の勘として文在寅(ムンジェイン)、トランプ両大統領は金委員長に騙される可能性が高いと見る。

けさのNHKオンラインには過去に北朝鮮が国際社会を欺いてきた交渉の数々が詳しく紹介されている。トランプ大統領は「過去の二の舞にはならない」と自ら墓穴を掘ることはないと断言してきた。そのトランプ氏が金委員長の中央委員会総会における発言を「大きな前進」と前向きに評価、ツイートでは米朝の首脳会談が楽しみだとも書き込んだ。軽挙妄動を常とする同大統領の本領発揮といったところだろうが、何やら墓穴を掘りそうな雰囲気が漂い始めていた。ところがその翌日にはメディアの「譲歩しすぎ」との批判を意識して、「結論には遠い」との修正を行っている。おそらくホワイトハウス高官や側近レクを受けて気がついたのだろう。米朝交渉の先行きはそんなに簡単ではないと。前日の前向きな評価が一歩後退というか、より現実的になってきた可能性がある。

韓国の文大統領も北朝鮮の非核化という歴史的な使命を果たせないだろう。メディアがキャリーする同大統領の発言の多くは「北朝鮮寄り」だ。両親が北朝鮮出身で、北朝鮮に近親感を抱いているという本音が見え隠れしている。それ以上に大統領選の公約として「南北路線」を主張してきた。その主張が本人の努力に関係なく具体化し始めたことをうけ、自分で自分の主張に酔いしれているようなところがある。これでは27日の首脳会談で金委員長に、非核化に向けた厳しい要求を突き付けることなどできないだろう。米朝首脳会談に向けて金委員長のパイロット役を果たすのが精一杯か。二人の大統領の間で「最大限の圧力維持」を主張する安倍首相や河野外相にとっては、主張は正当だが孤立を招く危険性がつきまとう。これから数週間、国際政治の表と裏で難局が続く。