• トランプ大統領、「うそ」を指摘もサウジとの関係の重要性強調
  • 英独仏はサウジの直近の説明に疑義、事実を裏付ける証拠を要求

サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が死亡した経緯についてサウジが説明を二転三転させたことから、対応を検討している米国やその同盟国の当局者らの間に疑念が広がった。サウジ外務省は21日、カショギ氏は「ならず者の工作活動」による「重大な手違い」によって殺害されたと説明した。

ジャマル・カショギ氏、フォトグラファー:Mohammed al-Shaikh / AFP via Getty Images

フランスはさらなる情報の提供を要求、ドイツはサウジへの武器輸出を停止した。米国では、共和・民主両党議員らが殺害の情報をサウジの最高権力者らが知っていたのではないかとの見方を示す一方で、トランプ政権はサウジと同国経済は米国にとって極めて重要な存在だと強調した。

米紙ワシントン・ポストにサウジ政権を批判する記事を寄稿していたカショギ氏が失踪してから2週間余り経過したこの週末、サウジは同氏が今月2日、トルコのサウジ総領事館内で殺害されたことを認めたが、その死は過失によるものだったと説明していた。しかしサウジのジュベイル外相は21日、殺害は「ならず者の工作」によるもので、このチームが殺害後、隠蔽(いんぺい)工作を行ったと述べた。サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子はこの企てを知らなかったと同外相は語った。

ジュベイル外相はFOXニュースとのインタビューで、「この工作活動では、メンバーが権限と責任を逸脱する結果となった」と発言。「彼らは総領事館内で誤ってカショギ氏を殺害し、それを隠蔽しようとした」と述べた。

サウジ当局者は最初はカショギ氏が生きて総領事館を出ていったと説明していた。その後、説明が二転三転したため同盟国の対応は難しくなった。

英国のラーブ欧州連合(EU)離脱担当相は21日のラジオやテレビでのインタビューで、サウジの直近の説明は信用できないと発言。フランスのルメール経済・財務相はサウジに真実を明らかにするよう求めた。ドイツのマース外相はカショギ氏を巡る捜査が続いている間は独政府はサウジへの武器輸出を認めないと述べた。これら3カ国にとってサウジは重要な市場だ。英独仏はまた21日に、サウジの捜査の「仮説」を「信じるに足ると見なすには事実の裏付けが必要だ」とする共同声明を出した。

トランプ大統領もワシントン・ポストとのインタビューで、サウジの説明の「ごまかしとうそ」は顕著だと指摘した。しかしその一方で、ムハンマド皇太子は「強い人」であり、カショギ氏殺害に皇太子が関与した証拠はないと擁護した。一部議員はこうしたトランプ大統領の姿勢に疑問を示した。

トルコのエルドアン大統領は、23日に開かれる与党・公正発展党(AKP)の議会会派会合で、カショギ氏殺害事件の詳細を公表すると約束した。トルコ紙ハベルトゥルクが報じた。

これら各国の対応には、サウジとの長きにわたる経済・国防上の結び付きと、カショギ氏殺害の責任問題をはっきりさせなければ、世界中の専制的な体制が今後も政府に批判的なジャーナリストや反対派らを殺害するのではないかとの懸念の間で難しい選択を迫られる様子が見え隠れする。

原題:Allies Struggle to Respond to Changing Saudi Khashoggi Story (2)(抜粋)