◇飲食料品減税、2年後に元に戻せるか◇
順調にいけば本日の午後、高市政権は臨時閣議を開き、飲食料品にかかる消費税減税案を閣議決定するだろう。この機会に、「2年後に税率を元の水準へ戻せるのか」という点について考えてみたい。
個人的には財政健全派の主張とは異なるが、十分可能だと考えている。以下、その理由を述べたい。
その前に、財政健全派の人々は「思考停止状態」に陥っていると言わざるを得ない。その代表例として、国民民主党の玉木雄一郎代表の主張を振り返ってみよう。
玉木氏はX(旧ツイッター)で、2年後に税率を元へ戻すのは困難だと主張している。その理由は単純で、今後さらにインフレが進むからというものだ。
この主張には一定の合理性がある。インフレによって飲食料品の価格が上昇し、その上に再び8%の消費税が課されれば、消費者にとっては実質的な増税となる。税率引き上げは国民の支持を得にくく、2028年に予定される参議院議員通常選挙を控え、国会議員も賛成しにくいという理屈である。
私は玉木氏個人を批判したいわけではない。2年後に税率を引き上げられるかどうかを論じる前に、2年後の日本経済がどうなっているのかを、できる限り想像力を働かせて考える必要があると言いたいのだ。
高市政権は、「責任ある積極財政」の推進役となる「骨太の方針2026」をすでに閣議決定している。今後は、この方針を基にした予算編成が本格化する。
「骨太の方針2026」は積極財政政策が並ぶ内容であり、財政運営の転換点とも言える。補正予算は緊急事態への対応に限定し、本来必要な施策はすべて当初予算へ盛り込む。単年度主義を見直し、複数年度で予算を管理する。また、本予算とは別に「『強く豊かな日本』投資枠」を創設し、概算要求の上限(シーリング)も廃止する。
こうした内容から、日本経済の姿はある程度想像することができる。
◇活況を呈する日本経済◇
具体的な規模はまだ分からない。しかし、かなり大規模な予算になることは間違いないだろう。場合によっては、これまでにない規模の数字が並ぶ可能性もある。
もっとも、すべてはこれからだ。財政健全派は年末の予算編成まで、高市政権の足を陰に陽に引っ張るだろう。
しかし、予算編成の過程で現政権の方針に真正面から逆らうことは容易ではない。そのため、来年秋に予定される自民党総裁選で高市首相を引きずり下ろそうという動きが強まるだろう。その兆候はすでに現れている。この点については昨日、この欄でも触れた。
本題に戻ろう。
要するに、2027年度予算をどう編成するかが、積極財政派と財政健全派が真正面からぶつかる最大の山場になる。
高市政権は、よほどの政治的なハプニングがない限り、超積極型の予算を編成するだろう。その予算が来年3月末までに成立した場合、日本経済はどう変わるのか。
「失われた30年」のくびきから解放され、資金がより自由闊達に行き交う経済へと変化していく可能性がある。
日本経済は久しぶりに活況を呈するだろう。
さらに、来年の自民党総裁選で高市首相が続投すれば、超大型の積極予算は2028年度も続くことになる。
予算の拡大に加え、大企業による価格転嫁も続くだろう。コスト上昇分を適切に価格へ転嫁できれば、企業業績が大きく落ち込むことは考えにくい。企業は増収増益を維持し、その結果として賃上げも継続する可能性が高まる。
企業の賃上げについては、次のような見解がある。
「かつて、フォード社の創業者ヘンリー・フォードは、周囲の嘲笑をよそに、自社で雇用する労働者の賃金を大幅に引き上げた。購買力を高めた労働者たちがフォード社の自動車を買うことを計算に入れてのことである。」(中野剛志著『国力とは何か』33ページ)
その結果、フォード社は大成功を収めた。
◇思考停止状態◇
玉木氏はインフレだけを見て、「税率は引き上げられない」と主張している。
果たしてそうだろうか。
企業はデフレ時代には内部留保を積み上げることができた。しかしインフレ時代には、それだけでは人材を確保できない。社員の手取りを増やさなければ、労働者に見放されてしまうからだ。
労働者は同時に消費者でもある。インフレに見合った賃上げが実現すれば、家計には余裕が生まれ、消費も拡大する。
そうした時代が到来すれば、日本経済は大きな活況を迎えるだろう。
物価上昇とともに金利も上昇する。そのとき景況感はどうなるのか。単なる活況にとどまらず、過熱感さえ生まれる可能性もある。
もし景気が過熱するのであれば、税率を引き上げることで需要を抑制するという政策も選択肢になるだろう。
蛇足になるかもしれないが、景気調整を日本銀行の金融政策だけに依存するのは効率的ではない。そうした時代になりつつある。
個人的には、消費税率を機動的に上下させることで景気をコントロールするという発想も十分あり得ると思っている。
2年間限定の飲食料品減税は、高市政権が世界でも例の少ない「消費税を活用した景気調整」の第一歩を踏み出そうとしているのかもしれない。
玉木氏は、積極財政、企業の賃上げ、インフレ、金利上昇、投資の活発化など、さまざまな要因が絡み合って形成される2年後の日本経済について、インフレだけに焦点を当てて論じている。
やや一面的な見方と言わざるを得ない。
この30年間、財務省は日本が保有する膨大な資産には目を向けず、政府債務だけを強調して財政健全化の必要性を訴え続けてきた。
その思考様式は、玉木氏の議論にもどこか共通するものを感じる。
私は、このような一面的なものの見方を総称して「思考停止状態」と呼んでいる。