河野太郎外相から抗議を受けた後、記者団に囲まれる李洙勲駐日韓国大使(右)=30日午後、東京・霞が関の外務省

韓国最高裁が30日、日本に徴用された韓国人に対する損害賠償を命じたことを受け、日本政府は毅然(きぜん)とした姿勢で臨み、日本企業などに不利益が生じないよう韓国政府に求める方針だ。国際司法裁判所(ICJ)への提訴も辞さない構えで、河野太郎外相がその可能性に言及。判決の不当性をアピールするとともに、韓国側をけん制する狙いがあるとみられる。

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 河野外相は判決後直ちに、李洙勲駐日韓国大使を外務省に呼び、「国際社会の常識では考えられないことが起こっている」として、強い口調で懸念を伝えた。

日本政府は、1965年の日韓請求権協定に基づき「解決済み」との立場。韓国側に判決に沿った対応を避けるよう求め続ける方針だ。この問題に万全の体制で対応するため、外務省は30日付でアジア大洋州局に「日韓請求権関連問題対策室」を設置した。

ICJへの提訴をめぐり、日本政府は2013年に韓国側に対し「判決が確定すればあり得る」と伝達している。ただ、裁判に持ち込むには当事国の同意が必要なためハードルは高い。

日韓合意に基づき元慰安婦に現金支給してきた「和解・癒やし財団」の解散を韓国側が検討していることや、国際観艦式での自衛艦旗の「旭日旗」掲揚問題など、日韓関係には不透明感が漂い始めている。

北朝鮮問題などで日韓連携は不可欠で、日本政府内では「未来志向」をうたった日韓関係に冷や水を浴びせかねないと懸念が強まっている。文在寅大統領の来日をめぐる日韓間の調整にも影響しそうだ。日韓請求権協定は、紛争発生時の対応として、2国間協議や第三者による仲裁を定めているが、日本政府は当面、韓国政府の出方を見極める方針だ。