15日、香港で記者会見する林鄭月娥行政長官(AFP時事)

 【香港時事】香港政府トップの林鄭月娥行政長官は15日記者会見し、香港で身柄を拘束した容疑者の中国本土への移送を可能にする逃亡犯条例の改正を無期限で延期すると発表した。9日の100万人デモなど改正案に対する市民の反対拡大を受けて決断した。撤回ではなく、あくまで「先送り」と主張しているが、事実上の棚上げとみられる。中国政府も決定への支持を表明した。

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 林鄭長官は「改正に関する説明が足りなかった。状況が落ち着きを取り戻し、市民から意見を聴取するために審議を一時中断する」と表明。次回審議の日程は示されず、短期間での審議再開は困難な情勢だ。

 条例改正をめぐっては、中国政府に批判的な市民が引き渡しの対象になる恐れがあり、「一国二制度」を脅かすとして、香港市民の幅広い層から反発する声が上がった。

 香港政府の進める政策が市民の抗議行動で変更を迫られるのは、国家安全条例に反対する50万人デモがあった2003年以来。このときも政府は「無期限の延期」という表現を使い、同条例は現在まで凍結された状態だ。

 民意がひとまず勝利を収めた形で、政策決定に当たって中国政府の意向が大きな影響力を持つ香港では極めて異例の展開だ。林鄭長官は会見で、「中国政府も決定を尊重してくれている」と強調。延期決定に先立ち、中国側の高官と会ったかとの記者の質問に対しては回答を避けたが、否定はしなかった。

 香港の民主派団体は、16日に大規模デモを予告。9日のデモを上回る規模となることも予想される中、香港政府は、審議を続行すれば混乱に歯止めがかからなくなると判断したもようだ。

 一方、民主派はあくまで「延期」ではなく「撤回」を要求しており、今後も抗議行動を続けるとしている。