• 現状憂慮、自由、公正、無差別な貿易体制維持・強化訴え-安倍首相
  • デジタル経済ルールづくりで大阪トラック開始を宣言-特別イベント

日本が初めて議長国を務める20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が28日、2日間の日程で大阪市で開幕した。西村康稔官房副長官の記者説明によると、世界経済や貿易などについての初日の討議では、米中緊張の高まりに多くの国が懸念を表明。紛争解決の役割が果たせない世界貿易機関(WTO)の改革の重要性、緊急性で意見が一致した。

Key World Leaders Attend The G-20 Summit
G20首脳らの集合写真

  安倍晋三首相は貿易や経済に関する最初のセッションの冒頭、世界経済は「下振れリスクの方が大きい」とした上で、米中対立や中東情勢、北朝鮮問題などを念頭に「何よりも貿易と地政学を巡る緊張は増大している」と指摘。「下方リスクに対処し、必要な行動をとるのがG20の責務」と述べた。
 
  また、「貿易制限的な措置の応酬はどの国の利益にもならない」と指摘。「現下の世界貿易を巡る状況には深く憂慮している」として、今回のG20首脳間の議論を通じて「今こそ、自由、公正、無差別な貿易体制を維持・強化するための、強いメッセージを打ち出さなければならない」と訴えた。

  2日目の討議後、首脳宣言が採択される予定。宣言に盛り込む文言を巡って最後まで調整が続く見通しだ。安倍首相は閉幕後の議長国会見で、大阪サミットの成果を総括する。

  西村官房副長官は28日の記者説明で、各国首脳の具体的発言は紹介しなかったが、出席者から貿易を巡る状況は深刻であり、WTO協定と整合的な形で解決されるべきだとの意見があったという。WTO改革に関しては、紛争解決のための本来の役割を果たしていないと多くの国が指摘し、改革へのモメンタムを「G20として政治的に後押ししていく必要性についても一致できた」という。

  昨年のアルゼンチン・ブエノスアイレスでのG20サミットでは、採択した首脳宣言で「多角的貿易体制が果たしてきた貢献を認識する」と指摘したが、前年まで記されていた「保護主義と闘う」といった文言は米政府の反発もあり、盛り込まれなかった。

米中首脳会談

  サミットの議論を左右するのは貿易摩擦で対立を深めている米中の動向だ。29日に行われる見込みの首脳会談では、先月暗礁に乗り上げた通商協議再開に向け両国が歩み寄りを示せるかが焦点。トランプ大統領は26日、FOXビジネス・ネットワークとのインタビューで、会談で進展がない場合には中国製品に大規模な関税を発動する考えを示している。

  中国の習主席は28日、大阪を訪れているアフリカ諸国の首脳らと会談し、保護主義と「いじめ行為」を非難。「自らの利益を最優先し、他者の利益を損ねるいかなる試みも支持を集めることはないだろう」と話した。中国外務省でアフリカを担当する戴兵氏が明らかにした。

Key World Leaders Attend The G-20 Summit
トランプ米大統領と握手する安倍晋三首相

  安倍首相はサミットに合わせ、27日午後に習国家主席、28日午前にトランプ大統領とそれぞれ会談した。

Bilateral Meetings Ahead of the G-20 Summit
日中首脳会談

  G20開幕に先立ち、各国首脳らはデジタル経済に関する特別イベントを開催。安倍首相は「デジタル時代の成長のエンジンであるデータ流通、電子商取引に関するルール作りは急務だ」と呼び掛け、WTOで協議していく「大阪トラック」の開始を宣言。2020年6月のWTO閣僚会議までに「実質的な進ちょくを達成したい」と述べた。