【イスタンブール時事】トルコがシリア北部で進めるクルド人勢力に対する越境軍事作戦で、過激派組織「イスラム国」(IS)元戦闘員の収監施設が管理不能となり、大量脱獄が起きるのではないかと懸念が高まっている。現実となれば、トルコ軍とクルド人勢力が衝突する現地情勢の混乱に拍車が掛かるのは避けられない。

トルコから砲撃=「防衛措置につながる」と警告-シリア駐留米軍

 トルコのメディアによると、トルコが作戦で「安全地帯」設置のため制圧を目指すシリア北部のトルコとの国境から幅30キロ、東西480キロの地域には、北東部マリキーヤなどに複数のIS収監施設が存在する。ロイター通信などによると、北東部カミシュリでは11日、ISの5人が施設から逃げ出す一方、ISが犯行を主張する自動車爆弾テロも起き、民間人4人が死亡した。

 これらの施設では、クルド人勢力の管轄の下、少なくとも数千人の元IS戦闘員が拘束中とされる。欧州諸国の出身者も多い。今年8月にはトランプ米大統領が「欧州が身柄を引き取らないなら、欧州に向けて解き放たざるを得ないかもしれない」と発言し、物議を醸した。

 トルコのエルドアン大統領は10日の演説で、この問題について「私たちは責任逃れをする国ではない」と述べ、制圧後もトルコが収監施設を適切に維持する考えを示した。ただ、トルコ軍の猛攻にさらされるクルド人勢力が施設を放棄し、トルコの管理下に入る前に脱獄が起きる事態も想定される。

 今年3月にシリアで支配拠点を失ったISをめぐっては、軍事作戦で生じた混乱に乗じ、なお国内に潜伏する残党が勢いを盛り返す可能性も指摘されている。