横浜港沖に停泊しているクルーズ船の乗客乗員に対する検査で、結果が判明した31人のうち10人から新型コロナウイルスの陽性反応が出た。テレビは朝からこのニュースで持ちきりである。アイオワ州で実施された民主党の候補者集会も、日本の国会の論戦もこれで吹き飛んでしまった。事態は一向に改善しない。メディアが過剰ともいうべき報道を繰り返すのも致し方ないか。そんな中で以下の記事が目に止まった。「新型コロナショック…習近平政権最大の危機はまだまだ『序の口』、3月開催の全人代も延期濃厚で」とタイトルされている。

以前このコーナーで新型肺炎に関する中国国内の騒動は「究極の忖度」と書いた。それを具体的にあとづける記事でもある。まずはWHOのテドロス事務局長。「2016年までエチオピアで外務大臣をしていた人物で、2017年7月、中国の後押しで、WHOのトップに就いた」とある。この事務局長の下でWHOはいたるところで中国への配慮が透けて見える。エチオピアは「一帯一路」のアフリカにおける「模範国家」。昨年、中国は同国の対中債務の利子を帳消しにしている。いまのWHOは習主席の要請には逆らえないのかもしれない。同事務局長、「緊急事態」の発令を一旦は見送っている。

それ以上に深刻なのは習主席を頂点とする上意下達の強権的な国家体質が生み出す様々な問題だ。情報の操作や隠蔽、正しいことを言っても通らない現場、事実よりも権力の都合が優先される官僚体質など、新型肺炎以上に深刻な中国の実態がリアルに報告されている。こういう記事を読んでいると、習主席は中国人民のみならず全世界を敵に回しているように見える。中国の体制が一気に瓦解するとは思えないが、この記事を読む限り中国が崩壊に向かう糸口が見えてくるような気がする。記事の最後の一節を引用する。<マスクはあるか?ない。消毒液はあるか?ない。防護服はあるか?ない。ゴーグルはあるか?ない。困難なことはあるか?ない。お上への信心はあるか?ある>