• FOMCの緊急会合・利下げは金融危機下の2008年10月以来
  • ウイルス感染拡大が新たな課題とリスクをもたらした-パウエル氏

米連邦公開市場委員会(FOMC)は3日に臨時会合を開催し、0.5ポイントの緊急利下げを全会一致で決定した。新型コロナウイルス感染の広がりで過去最長の米景気拡大が減速または失速するとの懸念が高まる中、対応に踏み切った。

  FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1-1.25%とした。米金融当局による緊急利下げは金融危機下の2008年10月以来。これに数時間先立ち主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁は電話会議を行い、急速な衛生上の危機に対応するため全力を尽くすと表明した。

  連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、「経済見通しに対する新たなリスクを前にし、米経済の力強さを維持できるよう、この措置を講じた」と説明。「新型コロナウイルスの感染拡大が新たな課題とリスクをもたらした」とも語った。

Federal Reserve Chairman Jerome Powell Holds News Conference After Rate Cut
ワシントンで3日記者会見するパウエルFRB議長Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  米国株は利下げ直後に上昇に転じたものの、程なく再び下げた。これは、新型肺炎がもたらす経済への悪影響に対処する上で、利下げ効果が疑問視されていることを示唆している。S&P500種株価指数は一時3.7%下落。米10年債利回りは初めて1%を割り込んだ。FF金利先物市場では、年内の追加利下げが織り込まれている。

Fed delivers emergency interest rate cut amid coronavirus threat

  パウエル議長は3月17、18両日開催のFOMCでの追加措置の可能性を残し、「向こう数週間、数カ月にわたり状況を注視し続ける」と発言。その上で、米金融当局に全ての解決策があるわけではなく、人的・経済的ダメージの抑制には政府や医療専門家、中銀など多方面からの対応が必要になると指摘した。

  同議長は「利下げが感染率を低下させたり、サプライチェーンの混乱を収拾したりするわけではないことは理解している。だが、当局の行動が経済に有意義な押し上げ効果をもたらすと信じる」と述べた。

  今回の利下げ決定は全会一致だったが、FOMCは声明で「米経済のファンダメンタルズは依然強い」との認識も示した。

  元FRBエコノミスト、ジョンズ・ホプキンス大学のジョナサン・ライト教授(経済学)は「米金融当局には弾薬がほとんどなく、手持ちの弾薬は供給への潜在的に大きな悪影響に対処する課題に全く適していない」と指摘。 「当局は手元の手段でできることをすべきだという見解だ」と付け加えた。

G7協調

  これに先立ちG7財務相・中銀総裁は、電話会議後の共同声明で「強固で持続可能な成長を実現するため、また下方リスクから守るため、すべての適切な政策手段を用いるとのコミットメントを再確認する」と表明した。

  既に金利がマイナス圏にあるユーロ圏や日本の中銀には追加利下げの余地は少ないものの、今回のFOMC決定が他の国・地域の中銀による金融緩和の前触れとなる可能性はある。

  また、トランプ米大統領はこの日の利下げ後に追加措置を要請。金融当局は「追加緩和を実施しなければならない。最も重要なのは他国や競争相手国と足並みをそろえることだ。公平な条件ではない。米国にとって不公平だ」とツイートした。

  米金融当局が0.25ポイントを上回る幅で利下げしたのは08年以来。当局は昨年3回利下げした後、大統領選が予定される今年は金利据え置きの見通しを示していただけに、今回の利下げは大きな姿勢の変化となった。

ブルームバーグのエコノミストの見方

「われわれは年央までに2回連続0.25ポイントの利下げ、計0.5ポイントの追加利下げを予想する。新型コロナウイルス関連のニュース次第で、追加利下げが3月に始まるか4月に始まるかが決まる」

–カール・リカドンナ、イリーナ・シュリエティバ、アンドルー・ハスビー

(英文の原文はこちら)

原題:Fed Cuts Half Point in Emergency Move Amid Spreading Virus (3)(抜粋)