[東京 12日 ロイター] – 新型コロナウイルスの感染拡大と経済活動の縮小に対応し、政府・与党内で新たな経済対策に向けた動きが加速している。水面下では事業規模10兆─20兆円の対策案が浮上。国債発行も視野に、2020年度予算の成立を待って本格的な策定作業に入る予定だ。 

政府は10日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、第2弾の緊急対応策を打ち出した。ただ「これまでの緊急対策は応急措置に過ぎず、経済対策とは言えない」(経済官庁幹部)と認識されており、リーマン・ショック以来の急激な株安と急速な景況感の冷え込みに対応して、与党内から大型経済対策を求める声が高まっていた。複数の政府関係者によると、新たな経済対策は20年度補正予算も念頭に4月中の策定を目指す。 

一部経済官庁の間で検討が始まったのは、安倍晋三首相が打ち出した学校休校措置に伴い、仕事を休業した子育て世帯を直接支援する現金給付など。 

このほか、中国からの部品供給に依存した製造業のサプライチェーン見直し支援なども遡上に上る。訪日(インバウンド)客急減で苦境にある観光業救済のため、旅行代金への補助金などの支援策も議論されている。 

政府関係者の間では、感染の拡大で取りざたされる東京五輪・パラリンピックの延期・中止による経済的打撃を吸収するためにも大規模経済対策が不可欠との見方も出ている。そのための財源として「赤字国債発行もやむなし」(政府関係者)と声もある。 

もっとも対策の方向性・規模感には政府内でも温度差がある。人手不足で公共事業の積み上げには限界があり、「財源が足りず(直接的な財政支出である)真水で数兆円程度が現実的」(関係筋)との指摘も出ている。 

しかし11日には自民党の安藤裕衆院議員ら若手が「令和の恐慌」回避のため30兆円規模の補正予算編成と、消費税率のゼロへの時限的引き下げを柱とした経済対策を西村康稔経済再生相に提言。野党の国民民主党・玉木雄一郎代表からも消費税率引き下げと合わせ「早急に補正予算を組み、最低でも15兆円規模の緊急経済対策を行うべき」との声が挙がっており、対策規模は(新規)赤字国債発行も視野に議論が進みそうだ。 

ある政府与党関係者は「(対策を打つ場合は)日米で連携した財政出動を目指したい。20兆円程度の規模は目指したい」と述べている。 

編集:石田仁志