[ワシントン 29日 ロイター] – 米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は29日、国内での新型コロナウイルス感染者急増について、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)やマスク着用などの指針が順守されていないことが主因とし、「惨事を招くレシピ」と警鐘を鳴らした。 

米政権の新型コロナウイルス対策チームの一翼を担うファウチ所長はCNNとのインタビューで「市中感染という状況になっている。刑務所や高齢者施設、精肉施設といった特定の場所での感染に比べ、封じ込めは難しい」と述べた。 

とりわけ早期に経済活動の再開に動いた米西部や南部を中心に感染者が急増しており、先週には15州で1日当たりの新規感染者がこれまでの最多を記録した。 

カリフォルニア州では前日、ロサンゼルス郡など7つの郡でバーの休業が命じられた。テキサス、フロリダ州当局も先週末にバーの営業停止やレストランの入店制限強化などを命じている。 

ファウチ所長によると、保健当局者は全容の把握に向けて感染拡大が深刻な地域で「包括的検査」を実施することを検討しているという。 

また、年内にワクチンの利用が可能になることを楽観視しているとしつつも、どの程度の効果が見込めるかは不明とした。 

ペンス副大統領は前日、テキサス州に旅行する場合、マスクを着用するよう呼び掛けた。自身もマスクを着用しているが、トランプ大統領は公の場でマスクを着用することを拒否している。 

ニューヨーク州のクオモ知事は、トランプ大統領が公の場でマスク着用を義務付ける大統領令を発令し、自身もマスクを着用して「模範を示すべき」と主張した。 

マスク着用を巡っては共和党内からも圧力が強まっている。 

共和党のマッカーシー下院院内総務はCNBCとのインタビューで、米国民には新型コロナ感染拡大抑制に向けて保健当局の指針を順守する責任があるとし、ソーシャル・ディスタンシングを維持できなければマスクを着用するよう要求した。 

同党のスコット上院議員(サウスカロライナ州)もツイッターへの投稿で「マスクを着用するよう全ての人に促す!」と述べた。 

ホワイトハウスのマクナニー報道官は、マスク着用は「個人の選択」というのがトランプ大統領の考えと強調。その上で「トランプ大統領は国民が自身の安全に最適な決定をするよう促している。マスク着用に異存はなく、地元当局の要請に従うべきとの考えを示している」と述べた。