[上海 30日 ロイター] – 米学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された研究論文によると、中国のブタから見つかった新しいインフルエンザウイルスがヒトへの感染性を高めており、「パンデミック(世界的大流行)ウイルス」になる可能性に備えて監視する必要がある。ただ、専門家らは差し迫った脅威はないと指摘している。 

中国の研究者チームは2011─18年にブタから見つかったインフルエンザウイルスを調べ、H1N1の「G4」株を発見。これは「パンデミックウイルス候補のあらゆる絶対不可欠な特質」を備えているという。 

養豚場の労働者も血中のウイルスレベルが高まっており、「豚産業の労働者を中心に、ヒト個体群の緊密なモニタリングが至急実施されるべき」とした。 

論文はウイルスが種を隔てる壁を越えてヒトに移るリスクを強調。特に、飼育場、繁殖用施設、食肉処理場、生鮮市場の近くに数百万人が生活する中国の人口密集地域にリスクがあるとした。 

中国外務省の趙立堅報道官は30日の定例記者会見で、「この問題に関して中国は状況を注視している。われわれはいかなるウイルスについても、拡大とまん延を防ぐためあらゆる必要な措置を講じる」と述べた。 

世界保健機関(WHO)のリンドマイアー報道官は会見で、WHOは中国の論文を精読すると指摘。「インフルエンザに対して警戒を弱めることができないことを強調しているほか、新型コロナウイルスのパンデミック下でも油断せず、監視し続ける必要がある」と述べた。