[ワシントン 30日 ロイター] – トランプ米大統領は30日、11月に予定されている大統領選を延期する可能性に言及した。ただ、発言が本意かどうかは不明。合衆国憲法では大統領に延期の権限はなく、野党だけでなく身内の与党からも批判が上がった。 

トランプ氏はツイッターで、新型コロナウイルス流行に伴い必要とされる郵送投票について「2020年は史上最も不正確で不正な大統領選になる。米国にとって大きな恥だ」と非難。その上で「人々が適切に、安全に、安心して投票できるようになるまで選挙を遅らせるか?」と主張した。 

大統領選の投票日は、憲法で4年ごとに11月の第1月曜日の次の火曜日と規定されており、大統領選の年に当たる今年は11月3日が投票日となる。投票日を設定する権限は議会にある。 

こうした中、野党・民主党からは反発の声が上がった。下院の選挙管理小委員会で委員長を務めるロフグレン議員は、ロイターへの電子メールで「日程を変更できるのは議会だけだ」として大統領選延期を否定した。 

また、キルディー下院議員はツイッターで「現職の大統領がうそを並べ立て、権力を維持するために選挙の延期をほのめかしている。こんなことを許してはならない。共和派、無党派、民主派を含め全ての国民は、憲法を完全に無視した大統領の不正な言動に対して声を上げるべきだ」とした。 

トランプ氏の投稿はホワイトハウスにも予想外だったようで、トランプ氏の選挙陣営に内容を確認。陣営の報道担当は「大統領は、全て郵送投票にすべきという民主党の主張で混乱を起こしていることに疑問を呈しているだけだ」と説明した。 

共和党もクルス上院議員が「選挙での不正行為は深刻な問題で、それを阻止することが必要不可欠だが、選挙は延期すべきではない」と記者団にコメント。上院司法委員会のグラム委員長も記者団に対し、「郵送投票に対するトランプ氏の懸念は正しい」とした上で、「延期は良い考えではないだろう」と否定的な見解を示した。 

下院のマッカーシー院内総務は会見で、「米連邦選挙の歴史上、選挙が行われなかったことは一度もなく、行うべき」とし、延期案を否定した。 

上院のマコネル院内総務は地元ケンタッキー州でテレビインタビューに、米国は戦争や不況を乗り越えて常に予定通りに選挙を実施してきたと指摘。「どんな状況にも対応し、すでに予定されているように11月3日に選挙を行う」と述べた。 

ルビオ上院議員も選挙日の変更はないと強調。ロムニー上院議員も地元のユタ州では有権者の約90%が郵送で投票を行っているとし、延期に反対した。 

バー司法長官は今週の議会証言で、トランプ氏が投票日を変更できるかとの質問に「そのような質問を受けた経験はこれまでに一度もなく、考えたこともなかった」と発言。また投票の集計が明確である限り、現職の大統領は結果に異議を唱えることはできないとした。