[サンフランシスコ 24日 ロイター] – 陰謀論を宣伝する集団「Qアノン(QAnon)」について、ソーシャルメディア分析専門家は、ロシア政府が後ろ盾する組織が陰謀論の拡散に一定の役割を担っているとし、11月の米大統領選挙に対する懸念を示した。 

Qアノンは、2016年のいわゆる「ピザゲート」(ワシントンのピザ屋を拠点に民主党上層部が児童売春などを行っているという作り話)が流布された後に活動が始まり、トランプ政権の高官を名乗る「Qアノン(匿名のQ)」の投稿がきっかけになったとされる。 

研究者によると、Qアノンの台頭初期にロシアが関与した形跡はなかったが、トランプ大統領を英雄と称賛する動きが顕著になるに従い、ロシア政府が背後にいるとみられるソーシャルメディアのアカウントによる関与が拡大した。 

ソーシャルメディア分析を行う調査会社グラフィカのアナリスト、メラニー・スミス氏によると、ロシアによる情報操作の拠点とされる「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」は、「QAnon」のほか、Qアノンのスローガンである「WWG1WGA(Where We Go One, We Go All)」のハッシュタグを付けた大量のツイートを投稿した。 

このほか、ロシア国営メディアのRTとスプートニクは、Qアノンに関する報道を増加。元米中央情報局(CIA)アナリストで偽情報拡散を専門とするシンディー・オティス氏によると、RTとスプートニクを含むロシア政府系メディアは、「米国は分断化が進み、崩壊しつつある」という文脈に沿う形でQアノンに関する報道を増加させている。 

グラフィカによると、Qアノンのフォロワーの間でロシア政府系メディアのコンテンツを共有する動きが拡大。同社の最高イノベーション責任者(CIO)、カミーユ・フランソワ氏は「ロシアはQアノンに対する関心を一段と高めているが、米国内でもこれに対応する動きが見られている」と述べた。 

グラフィカのほか、スタンフォード大学などの研究者は、Qアノンは現時点では米国の国内現象にとどまっていると指摘。ただグラフィカのスミス氏は、Qアノンの追跡は一段と困難になっているとし、「Qアノン関連アカウントと、トランプ大統領支持者のアカウント、ワクチン反対派のアカウントを識別するのは極めて難しい」と語った。