[ワシントン  12日  ロイター] – 米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領は次期政権について、米国の多様性を反映させると約束し、今後数週間のうちにホワイトハウスの重要ポストのほか、閣僚人事を発表する見通しだ。

11日には早速、バイデン氏の長年の側近であるロン・クレイン氏が大統領首席補佐官に起用されることが明らかになった。その他の主要幹部として有望視される候補は次の通り。

<国務長官>

クリス・クーン氏:バイデン氏の地元デラウェア州選出の上院議員で、親しい友人でもあり、上院外交委員会の有力メンバーとしてバイデン氏に助言している。国務長官に指名されれば、上院ではすんなり承認されそうだ。

スーザン・ライス氏:オバマ政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務め、それ以前には国連大使、国務次官補などを歴任。国際問題における豊富な経験から国務長官の有力候補で、選ばれておかしくない。ただ、2012年にリビア・ベンガジで起きた米領事館襲撃事件を巡る論争への同氏の関与を巡って、共和党側が就任に反対する可能性がある。

ウィリアム・バーンズ氏:駐ロシア大使、国務副長官などの経歴を持つベテラン外交官で、15年のイラン核合意に道筋をつけた水面下の交渉で主導的な役割を果たした実績もある。現在はカーネギー国際平和財団の理事長。

<財務長官>

ラエル・ブレイナード氏:連邦準備理事会(FRB)理事で、09年の世界金融危機時には国際問題担当財務次官を務めていた。銀行規制撤回には反対票を投じてきたが、穏健派でない、より強硬な人物を求める左派からは批判を受けるかもしれない。

サラ・ブルーム・ラスキン氏:元FRB理事。財務副長官も経験しており、財務省の歴史で女性としてこのポストに就いたのはラスキン氏以外にいない。弁護士でもあり、以前にはメリーランド州の金融監督を担当。現在は投資信託大手バンガードの取締役。

ジャネット・イエレン氏:言わずと知れた前FRB議長で、金融政策の軸足を普通に働く人々が抱える問題や人種差別などに大きく転換させただけでなく、トランプ大統領が議長再任を見送って18年に退任した後も、ブルッキングス研究所で活発に金融政策を論じている。

<国防長官>

ミシェル・フローノイ氏:国防長官として最有力視されている人物で、就任すれば女性初の国防長官となる。クリントン政権とオバマ政権で国防総省高官を務め、今回の大統領選ではバイデン陣営の国防問題アドバイザーだった。

タミー・ダックワース氏:イリノイ州選出上院議員。一時は副大統領候補への起用が検討された。元軍人で、04年にイラクで陸軍のヘリコプターを操縦中に撃墜され、両脚を失った。オバマ政権で退役軍人省次官補を経験。国防長官になれば、タイ系米国人初の閣僚が誕生する。

<司法長官>

サリー・イェーツ氏:オバマ政権の司法副長官。トランプ政権でも一時司法長官代行となったが、トランプ氏によるイスラム圏7カ国からの移民・難民受け入れ制限命令の合法性表明を拒んだため解任された。

ダグ・ジョーンズ氏:元連邦検事で公民権運動を強く推してきた。17年に保守層が強いアラバマ州の特別選挙で上院議員に当選したが、今回の選挙では共和党候補に敗北している。

<エネルギー長官>

エリザベス・シャーウッド・ランダル氏:バイデン氏の上院議員時代のアドバイザー。オバマ政権ではエネルギー副長官を務め、送電網に対するサイバー攻撃や破壊活動の対策を指揮した。現在はジョージア工科大学教授。

アルン・マジュムダー氏:エネルギー省傘下で先進エネルギー技術の研究開発促進や資金拠出などを担当する部門の初代トップを務め、11年3月から12年6月まではエネルギー次官代行だった。アルファベット子会社グーグルのエネルギー担当バイスプレジデントを経て、現在はスタンフォード大学の研究施設で勤務。

ジェイ・インズリー氏:昨年、気候変動対策を掲げて大統領選に出馬したが脱落。今回の選挙でワシントン州知事に再選され、3期目を務めることになる。炭素税やクリーン燃料基準の導入に熱心な点から、環境保護団体が閣僚候補として推薦している。

<EPA長官>

ヘザー・マクティア・トニー氏:オバマ政権の環境保護局(EPA)地域監督官。現在は大気浄化運動団体の幹部を務める。ケニアやフランス、ポルトガル、ナイジェリア、セネガルなど15カ国で環境問題について政府当局者への啓蒙活動に取り組んできたため、左派に人気がある。

メアリー・ニコルズ氏:カリフォルニア州大気資源局長で、州独自の環境規制を取り仕切っている。クリントン政権ではEPAの高官だった。

<CIA長官>

マイケル・モレル氏:オバマ政権で中央情報局(CIA)副長官と長官代行を2度務めた。現在はワシントンのコンサルティング会社ビーコン・グローバル・ストラテジーズの地政学リスク担当会長。

アブリル・ヘインズ氏:オバマ政権の国家安全保障担当大統領副補佐官。女性初のCIA副長官にもなった。17年にオバマ政権を去り、コロンビア大学で幾つかのポストに就いた。

<厚生長官>

ビベク・マーシー氏:医師で元医務総監。最近はバイデン氏が立ち上げた新型コロナ対策諮問委員会の共同委員長として認知度が高まりつつある。

マンディ・コーエン氏:ノースカロライナ州厚生局のトップを務める医師で、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)の拡大を提唱している。オバマ政権では、「センターズ・フォー・メディケア・アンド・メディケイド・サービシズ」の最高執行責任者だった。

デービッド・ケスラー氏:元食品医薬品局(FDA)長官で、バイデン氏の新型コロナ対策諮問委員会のもう1人の共同委員長。FDA長官時代には、抗エイズ薬の承認手続き期間短縮やたばこ産業規制などに取り組んだ。

<国土安全保障長官>

アレハンドロ・マヨルカス氏:キューバ系米国人弁護士。国土安全保障長官になれば、中南米系では初めて。オバマ政権で市民権・移民局(USCIS)局長を務め、幼少期に米国に連れてこられて不法移民になった「ドリーマー」の在留を認める措置「DACA」の導入を主導した。DACAに共和党は批判的で、マヨルカス氏が指名された場合、上院で同党が反対してもおかしくない。

ザビエル・ベセラ氏:元下院議員。副大統領就任を確実にしたカマラ・ハリス氏が以前、カリフォルニア州の司法長官を退任したあと、後任になり、在任中に左派からの評価が高かった。ハリス氏の地盤を引き継いで上院議員に出馬する可能性もある。

リサ・モナコ氏:バイデン氏が上院議員時代に司法委員会メンバーだった際の側近で、女性への暴力を取り締まる法令の整備に尽力。オバマ政権で国土安全保障担当大統領補佐官も務めた。またモラー長官時代の連邦捜査局(FBI)の首席補佐官や、司法省の国家安全保障担当次官補なども歴任した。

<国連大使>(閣僚級ポスト)

ウェンディ・シャーマン氏:オバマ政権で国務次官を務め、イランとの核開発問題を巡る交渉で主導的な役割を担った。

ピート・ブティジェッジ氏:前サウスベンド市長。アフガニスタンで軍務を経験。今年の大統領選候補指名争いで敗れたが、撤退後にトランプ氏への対抗策としてバイデン氏を率先して推したため、「論功行賞」として重要ポストに起用される立場にある。