次期米財務長官に指名されたジャネット・イエレン氏は、企業や富裕層を対象とする一連の増税実現を目指し、議会と早期に取り組む方針を示した。一方でバイデン政権はインフラや社会的セーフティーネット拡充に向けた予算通過を議会に働き掛ける。

  19日に上院財政委員会で開かれたイエレン氏の指名承認公聴会を受け、議員からの質問に21日付の書面で回答したもので、ブルームバーグ・ニュースが114ページもの文書を入手した。上院財政委は22日、同氏の人事を前進させる予定だが、上院本会議での承認のための採決は来週まで行われない可能性がある。

  イエレン氏はこのほか、新政権は「中国の悪質な慣行にはあらゆる手段」を積極的に使うとし、対中関税は同盟国と協議するまで変更するつもりはないと言明した。また、「中国に実際に意味のある圧力をかける違ったアプローチが必要だ」とも指摘。バイデン大統領と共に各国の為替操作をやめさせるよう取り組んでいくと表明した。

  イエレン氏は「通商上の不公正な優位を得るための人為的な為替操作に対しては、バイデン大統領は反対の意思を明確にしている。この意向を支持しており、承認を受ければ、いかなる為替操作に対しても政権内で協力して反対していく」と表明した。  

  このほか税制や気候変動など、幅広いテーマが取り上げられた。主な内容の一部は以下の通り。

高所得者への増税

  • イエレン氏は年間所得が40万ドル(約4140万円)未満の世帯について、トランプ前政権が主導した2017年の減税が失効した後の影響などに対処するため、「議会メンバーとの協力」を約束した。バイデン氏は選挙戦で所得がこの水準を下回る世帯の増税はないとしてきた
  • 法人税率を21%から28%に引き上げるバイデン氏の提案を巡り、米国の競争力を弱めるとする共和党からの批判にイエレン氏は反論。インフラや米企業を後押しする他のプログラムへの投資に資金を活用することができるとしている

米金融当局との連携

  • 前財務長官が段階的に廃止した米連邦準備制度の融資ファシリティーを、復活させるために新たな取り組みを開始する意向はないと示唆
  • 同時に「今は行動が少な過ぎることが最大のリスクになる」と指摘
  • 米金融当局に資産購入の範囲について圧力はかけないと言明。「金融政策における米連邦準備制度の独立性という伝統を維持する重要性を深く理解している」と述べた

為替政策

  • イエレン氏は19日の承認公聴会での発言と同様、弱い為替相場を米国が目指すことはないと繰り返した。かつて財務省が使っていた「強いドル」には言及しなかった

気候変動

  • 有効なカーボンプライシング(温暖化ガスの排出量に価格を付ける仕組み)抜きに気候変動の危機を解決することはできないと指摘。「バイデン大統領は環境汚染者が炭素汚染の全コストを負担する執行メカニズムを支持している」と述べた

対外経済制裁

  • 制裁が対象を絞った効果的なものであり、意図しない結果を最小限に抑えられるよう、財務省として各制裁の慎重な見直しを行うと説明。トランプ前政権はイランや北朝鮮、中国、ベネズエラ、ロシアと関係する企業や個人などに対し、多くの場合は一方的に制裁を科していた
参考記事
イエレン氏「世界は変わった」と、超低金利下の大型経済対策案を訴え
イエレン氏のドル政策、市場主導アプローチでトランプ政権の路線脱却
イエレン次期米財務長官証言の5つのポイント-指名承認公聴会

原題:Yellen Leaves Door Open to Tax Increase on Wealthy Americans (3)、Yellen Says U.S. to Use All Tools Against Unfair China Practices、Yellen Says Administration Will Fight Currency Manipulation(抜粋)