東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性差別発言をめぐる一連の騒動にほとほとうんざりしている。森氏の発言はいまさら言うまでもないが、一連の出来事をめぐるメディアの報道にも嫌気がさしている。まるで「川に落ちた犬を棒で叩いている」ようなものだ。いつも感じることだが、メディアの批判は一斉にモノクロトーンで、連綿と繰り返される。内容はほぼ一緒。日本でも若い人の間には男女平等意識は浸透している。問題はちょっと前まであった男尊女卑的な発想が、高齢者の間に依然として残っていることだ。森発言の背景にはそんな時代感覚があるような気がする。それに森氏も気付いているのだろう。辞任を問われて「自分からどうしようという気持ちはない。皆さんから邪魔だと言われれば、掃いてもらえればいいんじゃないですか」と語った。この発言の前に自らを「老害、粗大ゴミ」と自嘲気味に定義している。問題は日本社会に「老害、粗大ゴミ」を掃いて捨てる機能がないことだ。

国際的な世論を持ち出すまでもなく、個人的には森氏は辞任すべきだと思う。昨日の予算委員会で立憲民主党の枝野代表が総理に詰め寄っていた。「辞任させられるのは総理だけですよ」。この質問に菅総理は明確に答えなかった。おそらく菅氏も森氏と同じ男尊女卑世代だろう。当年72歳。ちなみに自民党幹事長の二階氏は81歳。1939年生まれだ。軍国主義の最中に生まれている。この世代の人たちの多くがいまだに、日本社会のいたるところで権勢を誇っている。理由はいろいろあるだろう。経営者なら中興の祖、会社の業容拡大に貢献した、中にはひとりよがりで一旦握った権力は絶対に手放さないという人もいるかもしれない。政治家もしかり。自分は正しいことをしていると思っている頑迷固陋な独善主義者。こういう人たちは、急激に変化している世界の潮流に取り残されているという現実にまったく気付かない。森氏は自分を「老害、粗大ゴミ」と自認しているだけまだマシかもしれ得ない。

五輪組織委員会の理事20名のうち女性はたった5人しかいない。組織委だけではない国会議員も企業の役員も、学者も圧倒的に男性優位だ。しかも人事に影響力のある人の大半はいまだに、男尊女卑的な時代背景の下で多感な少年時代を過ごした人が多い。日本が世界に遅れをとっている一つの要因がここにあるような気がする。高齢者は自ら率先して一線を退くべきだし、その上で若手を養成するための社会的貢献に汗をかいた方がいいと思う。とりわけ組織に影響力を持つエスタブリッシュメント(主流派)は、率先垂範すべきだ。百害あって一利もない「老害、粗大ゴミ」を一掃すれば、日本列島の隅から隅まで活気が蘇るだろう。世界も例外ではない。固有名詞はあげないが、これに近い人はいっぱいいる。「老害、粗大ゴミ」になる前に高齢者は、引退して人生を楽しむべきだ。