きのう見たニュースで気になっていたのが国民負担率。NHKによると「令和2年度の『国民負担率』は、昨年度より1.7ポイント増えて46.1%となり過去最大となる見込みです」とあった。国民負担率というのは所得に占める税と社会保障費の負担割合を示している。税や社会保障費が一定で国民の所得が上がれば負担率は下がる。逆なら上がる。令和2年度の場合はコロナの感染拡大により2度にわたって緊急事態宣言が発令されるなど、経済活動が激しく落ち込んだ。所得も度重なる自粛要請で飲食業や観光業を中心に大幅に落ち込んでいる。所得が減って税と社会保障の負担は据え置かれているのだから、国民負担率が上昇するのは当たり前といえば当たり前だ。問題はこれを異常と見るか、仕方ないと見るかだ。個人的には異常だと思っている。

日本の「国民負担率」は、財務省のデータによると比較可能な昭和45年度には24.3%だった。50年でほぼ倍になった計算になる。学生だった50年前、日本の在り方をめぐって「高福祉、高負担」か「低福祉、低負担」か、議論した記憶がある。議論の結末は覚えていないが、結果的には「中福祉、中負担」で推移してきたような気がする。国際的な比較を見ると日本の負担率はOECD加盟35カ国の中で上から27番目、下から9番目となっている。中間よりはかなり下に位置しており、国民負担率は国際的に見て低いと言える。ただしこのデータは2017年度のもの。このあと、2019年10月1日から消費税が8%から10%へ引き上げられているし、医療費や健康保険料、年金の負担額も少しずつ上がっている。2020年の国際比較はかなりランクアップしている気がする。

財務省の統計にはこれとは別に「潜在的な国民負担率」という統計も併記している。国民負担率に財政赤字の国民所得比率を加えたものだが、この比率が20年度は66.5%に達し、こちらも過去最高となる見込みのようだ。コロナ対策で国債を追加発行しており、それがそのまま潜在的な負担率を押し上げることになる。昨年度の実績はともかくとして、コロナが収束したあとこの数字はどう変わるのだろうか。邪推するにポストコロナでも負担率は下がらないと思う。いずれ北欧やEUの一部の国のように、50%を上回り70%近くまで上昇するのではないか。問題は「高負担」で「高福祉」が実現するかどうかだ。高負担で低福祉は最悪だ。そういえば、国際的に見て感染者数が圧倒的に少ない日本の病床の逼迫度は感染が多い国に近かった。こちらは「少」でも「多」に匹敵していた。日本はどことなくチグハグな気がする。